ハレルヤ、我ガ青春ヨ!
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「そりゃねぇよ。」

気まずそうに去っていく小さな背中を見つめて呟いた。





「圭介ー、ちょっといい?」

最近仲良くなった気になるあの子に裏庭の倉庫の横の、桜の木の下に呼び出された。

目の前で言葉を慎重に選ぶその姿は、告白前の乙女そのもの。
こっちだって君のことしか考えられない…要するに両想いなんだから、まぁそりゃー有頂天ですよ。

ただ、俺には今までの経験上、ひとつだけ心配なことがあった。
だからそれが現実ではないことを祈って、ちょいと待て、と目の前の乙女に聞いたのだ。

「あのさ、これって修に関係する話じゃないよね?」






……そしてその結果がこれ、最初の場面に戻る、である。

案の定というかなんというか、俺の言葉を聞いた瞬間彼女の顔に翳りが差し、それならなんか文句があんの?ぐらいの表情になった。
嗚呼、なんという喧嘩腰。

結局俺は使い物にならないと判断されたのか、虫ケラ見るみたいな目だけを残して麗しの乙女は去っていったのだ。



「圭介ドンマイ。」


突然空から聞き覚えのある声がした。
見上げるとそこには桜の青葉に、倉庫の上の人影。
その人物こそこの騒動の原因張本人、飛騨さん宅の修くんである。

ちょいちょいと手招きをするその姿は、男から見てもカッコイイというか…美しいから思わずため息がでてしまう。

こんな綺麗な奴と幼稚園からずっと同じ学校で親友なもんだから、こんな辛酸を舐めるような経験は幼いころから数幾多だ。


どこからか昼休みの終わりを告げるチャイムの音が響いたけれど、気のせいだと無視をして桜の木をよじ登った。


「ドンマイってお前…
またもや原因はお前だろ。」

「でも俺だけの原因じゃない。好かれないのは圭介にも何か要因があるはずだ。」

「好かれるもなにも、既に他の奴──ってまぁお前だけど…を好きな奴の気持ちをどう変えろっていうんだよ…。」

俺がそう八つ当たりにも近い悪態をつくと、修の整った眉の間にむっと皺が寄った。

「気合いだよ気合い。」

「なんだよ気合いって。
気合いでどうにかなるんだったらお前が手本見せろつっの!」

「…今頑張ってるところだよ。」

体の中にラテン人の血を持つせいかどこか女慣れしたところがある修だが、本命の幼なじみとは上手いこといかずに四苦八苦しているらしい。
それどころか本命の穂純は、かっこいい年上の彼氏が出来たと俺にまで自慢してくる始末である。

おそらく彼の眉間の皺は俺の言葉によるというより、俺の言葉にどうにもならない自分の状況を重ねた結果なのだろう。



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