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□特効薬はありません!
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「せんせー、ベット借りまーす!」
そう言って生徒が一人、ぼさっとシーツに飛び込んだ。
まだ許可なんかしてないってのに。
「どうした?理由言わんと貸せんよ。」
といってもあまり貸す気はないのだけれど。
都合上、プラス自分の学生時代の経験上、保健室は生徒を癒やすためではなく学校から追い出すために存在しているものだと思う。
「、病気です。」
「何の?」
「……。」
「黙んなや。」
…仮病の生徒をいちいち受けて入れていたらキリがないが、いちいち追い払うのも面倒なんで、そのまま放っておくことにする。
「…あ、今先生俺のこと仮病って思ったでしょ。」
「……。」
「無視ですか。せんせー無視ですか。」
「うっさい黙れ。
今はお前みたいな駄目人間なんかより見てあげなきゃいけない奴がいんの!」
「駄目人間て!」
すっかりベットの住民化した男子生徒のことは無視をして、そこから布切れ一枚で遮断された空間に移動した。
そこでは高熱を出して苦しむ可哀相な1年女子がひとり、ウンウンうなされている。
負担のないように体を起こして、手に持ったコップと咳止めを渡した。
「大丈夫かぁー、辛くないかぁー?」
「……苦しいです。」
「ボクも苦しいでーす。」
「お前は黙ってろ!
っていうか入ってくんな!
風邪うつっても絶対看てやんねぇからな。」
ひょっこりシーツから顔だけ出したままいつの間にカーテンをめくったのか。先ほどから迷惑をかけまくる男子生徒が、こちらを覗き込んでいた。
その顔色はすこぶる良好である。それに比べた女子生徒の苦しそうなことはあまりにも悲痛で、出来ることならコイツとこの子の健康状態を交換してあげたい、と少し本気で思った。