理由
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ばちんっ!

「アンタなんかだいっきらい
 …出ていってよ」


朝起きたらいきなり平手打ちをくらって、おまけにその言葉。

寝起きの僕の頭では、今のこの状況と彼女の頭の中なんて理解できない。

「は?」

と、マヌケな音を口から零すのが精一杯だ。


「…わかんないの?」

そりゃあわからんさ、という言葉を、かろうじての所で飲み込んだ。


いったい昨日の夜なにをしたんだ、俺。

正直酒に酔っていて覚えてない。


嘔吐でもしたか?
…いやでもそんな形跡はどこにもない。

浮気疑惑か?
…隣の彼女も自分も生まれたばかりの姿で一晩一緒にいたのに、同時進行で浮気なんて出来るはずあるか。

…激しくしすぎて腰でも痛めたか?
……それにしたって「大嫌い」「出てけ」は言い過ぎだろう…



「…本当にまだわかんないの?」

「……」

はぁ…とため息をついて短い髪をかきあげる姿は童顔に似合わず、正直…かなりエロい。

思わず見惚れていたら、それに気付いた彼女の山形の眉がピクリと歪んだ。
そしてそのまま、呆れたようにクスリと笑って俺の頭に思い切り枕を打ちつけてきやがった。


「エロいこと考えてるヒマがあるなら、携帯見て考えなさいよ」

「へっ!?」

携帯!?
…思い当たる節はないが、…携帯!?

どこにどんな爆弾があるかわかりゃあせん!と必死に待ち受けにしがみつく。
それしかないだろ、コレ。



「…随分必死になっちゃって。思い当たる節あるんでしょ、」

「ないから必死になってんだって!」












「…日付」

「、え?」

血眼になってこの状況を読み解く鍵を探している俺を見ながら、彼女がぽつりと呟いた。









その言葉に従い、小さな液晶画面に目を落とす。













「あ、4月1日。」


「エイプリルフール!」







4月ばぁーか!
(「まんまと騙されおったな!」と笑う君を腹いせに押し倒してもいいだろうか、)





【2010.04.01.】


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