□おしえてあげない
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『君は僕の事なんて気にしてないでしょ』

唐突に雲雀が切り出した。
気にしてない?一体何を?
雲雀が突然不可解な事を言い出すのは今に始まった事じゃないけど、今回はいつも以上に理解不能だった。
俺は毎日雲雀の事で頭がいっぱいいっぱいなのになぁ…。





「…で、どう思います?先輩」

昼休み、俺は屋上で獄寺と昼飯を食べていた笹川兄に相談した。
雲雀の事を相談できるのは同じ学年の先輩くらいしかいないから。
俺のせいで先輩との昼飯を邪魔された獄寺は不機嫌だった。

「んー…雲雀は極限難しいからな…」

先輩も頭を抱えている。
雲雀を理解しようという考えがやっぱり甘かったのかもしれない。
2人でうんうん唸っていると、横から獄寺が口を挟んだ。

「…分かんなくねぇよ」

まるで雲雀に同情するかのような口調。

「え?!獄寺わかんの??」

助かった!!これで雲雀をこれ以上不機嫌にさせなくてすむ。
何故かと詰め寄る俺と先輩にたじろぎながらも獄寺は言った。

「多分俺と同じだろうな」

…??何が??

「それが分かってないからお前らは馬鹿なんだよ」

雲雀も俺も可哀相ー、と言って獄寺は冷めた目で俺と先輩を見た。





…分からない奴が1人増えた。





「「…」」

黙り込んだ俺と先輩向かって、呆れたように溜息をついた後、獄寺は立ち上がって、

「せいぜい足りない頭で考えやがれ」

と言って屋上を後にした。

「先輩」

「山本」

同時に口を開く。

「どうやら他人事ではないようだな」

苦笑いしながら先輩が言った。

「そうっすね」

雲雀と獄寺。
どちらも一筋縄ではいかない相手。

「さて、どうしたものか…」

うーん、と頭を抱える先輩を横目に、結局振り出しか、と俺はうなだれた。





俺はこんなにも雲雀が好きなのに。





「邪魔するぜー」

ガラガラと応接室のドアを開ける。

「入る時はノックしろっていつも言ってるでしょ、獄寺隼人」

はぁ、と溜め息をつきながら雲雀が中央に設置された豪勢なソファから答える。

「お前なら気配で分かるだろーが」

「そうだけど、一般常識。…んで??」

用は何??と言いたげな視線を向けられる。

「お前さ、野球馬鹿に言ったんだな」

「…まぁね」

なにを、とは言われなかった。
悩んだ山本が俺と芝生頭の所へ行くだろうという事は予想済みだったようだ。

「俺も同じだって言ってきてやった」

ニヤリと笑って言うと、雲雀は

「ふぅん、で、了平は??」

と、同じ様に口端を上げた。

「馬鹿2人、頭抱えてるぜ」

「だろうね」

雲雀と俺は似た者同士。
恋人も似た者同士。

「でも、僕らも相当の馬鹿だよね」

「だな」

「なんで、好きなんだろ」

「さぁな」

俺だけを見てくれれば良いのに。
誰彼構わず好かれようとする、彼らの
態度がたまに癪に障る。
…彼らに全くそのつもりがないのも更に
ムカつく原因なのだが。

「どーすんだろーな、あいつら」

「泣いて答えせがんでも教えない」

「だよなー、んなの恥ずかしすぎるぜ」

「恥ずかしい云々より、面白いから」

「…やっぱ性格悪いな、お前」

「今更」

「ちょっと山本に同情するぜ」

ぷいと顔を背けた雲雀に苦笑する。





『他人に愛想振りまく暇があるなら、自分だけに構え』





そんな事口が裂けたって言えない俺ら。
もし言ったら大喜びするんだろうけど。
だから絶対言わない…言えない。
素直じゃない俺ら2人と、鈍感すぎるあいつら2人。





だけど、もうそろそろ…


「雲雀ーッ!!」

「獄寺ーッ!!」


ドタドタと大きな足音が廊下に響いた。
答えは絶対に教えてやらない。





End.

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