□★Present For You!!
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「了平ちゃぁ〜んっvv」

「ルッスーリア!!いつ日本に来たのだ??」

8月某日。
ロードワークに勤しんでいた了平の後ろから声がかかった。
妙に高く間延びしたその声は、いわずもがなルッスーリアのもの。
振り返った喜色満面の了平に、ルッスーリアの頬が緩んだ。

「今さっきよ〜んvv了平ちゃんに会いにきたのvv」

ツン、と汗の垂れる了平の頬を突く。
ランニングとハーフパンツから覗く程よく鍛えられた腕と足。
こんな炎天下の中を走りこんでいるというのに全く焼けていない白い肌。
う〜ん、やっぱりイイ身体vvと、思わず触りたくなる所をルッスーリアはぐっと我慢する。

「・・・俺に??」

「そうよぉ、了平ちゃん、今月お誕生日でしょう??」

だからお誕生日プレゼント持ってきたのvvとルッスーリアは楽しそうに言った。
不思議そうな顔をしていた了平の顔がみるみる明るくなる。

「俺の誕生日を知っていたのか??」

「当り前じゃないvv大好きな了平ちゃんのことならチェック済みよぉvv」

ちなみに身長体重、血液型から家族構成、好きな食べ物、座右の銘までばっちりだ。

「おぉ!!それは極限驚いたぞ!!」

「それでね、了平ちゃん、ちょっと早いんだけど・・・渡したいのよ」

「む・・・やはり忙しいのか、そっちは」

「ボスの気まぐれにはホント困っちゃうのよね〜」

本当は誕生日当日、または前日に来日する予定を立てていた。
しかしそれを知ってか知らずか、XANXASはその両日にルッスーリアに単独任務をあてがったのだ。

「でも、了平ちゃんに直接会いにこれただけで十分よvv」

そう言ってルッスーリアは了平をぎゅっと抱きしめた。

「お、おい!!ルッスーリアっ!!汚いぞっ!!」

ロードワーク中で汗だくだったのを思い出した了平が抗議する。

「そんなの気にならないわvv了平ちゃん可愛いんだものvv」

「なっ・・・!!可愛いなどという言葉は女子に使うものだ!!」

「はいはい、そうね」

会うたびに繰り返されるその会話に、ルッスーリアは苦笑する。
可愛いに男も女もないのよ、なんて了平には通じないのだ。

「プレゼントはね、ホテルに置いてあるの」

だから一緒に来てくれないかしら??
そう言ったルッスーリアに、了平は戸惑った。

「・・・この、まま行くのか??」

了平がちょい、と汗だくのランニングの裾を持ち上げる。
普段がさつに見える了平だが、こういう時にA型の几帳面さを発揮する。
不意に見えた腹チラに鼻血が出そうになるのを我慢しつつルッスーリアは答えた。

「大丈夫よ、着替えもあるし、シャワーも浴びれるわ」

「そうか!!それは極限に感謝するぞ!!」

心配事がなくなって、満面の笑みを浮かべる了平の手をさりげなく握って、

「さぁ、行きましょうか」

2人はルッスーリアが宿泊しているホテルへと向かった。





「すごい部屋だな!!」

きょろきょろと物珍しそうに周りを見回しながら了平が叫ぶ。
普通の中学生なら滅多にお目にかかれないような高級な部屋。
いわゆるスイートルーム、というやつだ。

「ボスには内緒よ〜??」

しっ、と人差し指を口に当ててルッスーリアは言った。
どうやらボンゴレからの支給金を使って泊まっているようだ。

「風邪引いたら大変だから先にシャワー浴びちゃったらどう??」

「おぉ、極限にそうさせてもらうぞ!!」

「着替えは後で置いておくわね〜」

後ろにルッスーリアの声を聞きながら、了平は思い切りバスルームの扉を開いた。

「な、なんだ、これは!!」

中央に設置されたどでかい真っ白なバスタブ。
周りには色とりどりの花。

「どうしたの、了平ちゃん??」

不審に思ったルッスーリアが覗きにくる。
そして、あぁ、と納得したように言った。

「素敵でしょぉ??あたしお花のお風呂大好きなのよvv」

「・・・確かに、ルッスーリアには似合いかもしれんな・・・」

うふふ、と楽しそうに笑うルッスーリアを見て、了平は大きなため息をついた。

「ごゆっくりどうぞvv」

「すぐに出る」

浮足立ったルッスーリアを尻目に、了平は汗で濡れた洋服を脱ぎ、シャワーを浴びた。
少し熱めの湯がべたついていた身体を清めていく。
そんな中、やっぱり広すぎる風呂は落ち着かない、と改めて了平は思った。
豪勢なバスタブに身を沈めることなく、了平は浴室を後にした。
用意されていた少し大きめのバスローブに身を包む。
メインルームに戻ると、ルッスーリアが鼻歌交じりに何かをしていた。

「あら、早かったのね」

「極限にいい湯だったぞ」

「髪の毛、ちゃんと乾かすのよ〜」

まるで母親のように何から何まで世話を焼くルッスーリアに了平は苦笑する。
きっとヴァリアーでもそんな感じなのだろう。
・・・となると父親はあのXANXASか??
とんだ暴力家族だ。

「了平ちゃん??聞いてる??」

ぼーっとヴァリアー家族像を描いていた了平にルッスーリアの声がかかる。

「むっ、聞いておるぞ!!」

「あらそう??」

放心してるところも可愛いのだけれど、という言葉は呑み込んでおく。
いつものセリフをまた聞かなくてはならなくなるから。

「ところで、ルッスーリア、さっきから何をしておるのだ??」

了平は、先ほどから気になっていたことを聞いた。
ルッスーリアの手元にあるのは了平にとって見慣れないもの。
黄色やオレンジなどの色鮮やかなリボンや布。

「これが、了平ちゃんへのプレゼントよぉ〜vv」

「・・・は??」

くるり、と振り返ったルッスーリアが手にしていたのは、洋服。
それもフリルやリボンのあしらわれた、いわゆるメイド的な衣装。
こんなもの、自分にどうしろというのだろうか。
ルッスーリアの意図するところが分からなくて了平は固まる。

「もちろん作ったのはあ・た・し・よvv」

ご丁寧に付けられたタグを見せながらルッスーリアは言った。
よく見れば、『made by Lussuria』と書かれている。

「・・・すごいな」

裁縫が得意だとは聞いていたが、まさかここまでの腕を持っていると思わなかった。
了平の感嘆の声に、何を勘違いしたのかルッスーリアは頬を染めて言った。

「了平ちゃんにサイズはぴったりなはずよvv」

「・・・は??」

再び了平が固まる。
まさか、まさかまさか。

「俺・・・が着る・・・のか??」

背中を冷汗が伝う。

「当り前じゃないvv」

うふん、と小指を口元に当ててルッスーリアは言った。
サングラスで分からないが、きっとウインクしている、間違いない。

「・・・俺は、男だ」

「分かってるわよぉ」

「なら、なんなのだ、それは」

「あら、了平ちゃん・・・もしかして、逃げるの??」

少し小馬鹿にしたような声でルッスーリアが了平を挑発する。
逃げるも何もあったものではないのだが、

「に、逃げる訳ないだろう!!」

「じゃぁ着てくれるのね」

単純な了平はルッスーリアの口車に上手く乗せられてしまった。

「さぁ、早速お着替えしましょうvv」

ご機嫌なルッスーリアを横目で見ながら、了平はため息をついた。





「ぴったりねっ!!」

流石あたし〜vvと喜色満面、ルッスーリアが歓声をあげた。
一方了平は、ぐっと拳を握り締めて口を真一文字に結んでいる。
心なしか身体が震えているのは気のせいではないだろう。

カシャ、カシャ。
ピロリロリーン。
パシャ。

携帯のシャッター音、デジカメのフラッシュ。
そしてビデオカメラでのムービー撮影。
あらゆるメディアを駆使し、ルッスーリアは了平の姿を記録に残していた。

「了平ちゃん、笑顔、笑顔vv」

はい、チーズvvなどと陽気なルッスーリアを前に、了平の我慢は限界に達した。

「な・に・が、はい、チーズvvだぁぁぁぁぁ!!」

がぉぉ、と了平お得意の雄たけびが響く。
だんっ、と片足を椅子の上へと持ち上げれば、それにつられてスカートがふわりと舞い上がる。
シャッターチャンスとばかりに飛びつくルッスーリアを制して了平は吠えた。

「これのどこがプレゼントなんだ!!」

「あら嫌だ、了平ちゃんってばちっとも分かってないわ」

極限にぷんすかしている了平を諭すかのようにルッスーリアは話し始めた。

「敵を欺くにはまず、視覚から」

「・・・??」

「そして、どんなに動きづらい服装でも100%自分の力を発揮する」

「・・・」

「それができてこそ、最強のファイターなのよっ!!」

「・・・!!」

今時こんな嘘、引っかかる奴などいないだろう。
・・・笹川了平を除いて。

「ル、ルッスーリア・・・、お前っ・・・!!」

そんなにも俺の事を考えてくれていたのかっ!!
単純な了平は、ルッスーリアの方便を鵜呑みにしてしまっていた。

「当り前じゃないvv」

ルッスーリアがサングラスの下でほくそ笑む。
了平が単純な子で本当によかったと。
もちろん、このプレゼントにそんな意図はない。
あるのは可愛い了平を見たいという下心だけだ。

「そう考えると、これもなかなかいいものかもしれんな!!」

にこり、と了平がルッスーリアに笑顔を向けた。

(か、可愛すぎるわ、了平ちゃん・・・!!)

今日一番のシャッターチャンスを逃していたことに気づいたのは後になってからだった。
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