short

□嵐の夜に
1ページ/5ページ



芥辺探偵事務所

そこにいつもある代表主の芥辺氏の姿はなく

一方でいつもと変わりなくある者もいた



パソコンを開き、

慣れた速さで事務作業の仕事をこなしていた



「うっ〜ん」


大きく後ろに腕を伸ばし筋肉をほぐす



「こんなもんかな」



打ち込んだデータを保存しパソコンを閉じ部屋を見渡す


…静かだなぁ




今日は芥辺さんも口汚い悪魔たちはいない

依頼も来ていないからこれといって彼らを呼ぶ予定もない

この事務所にいるのはただ一人


そう、私佐隈りん子は店番ならぬ留守番をしているところなのです




佐隈はテレビの電源をつけてみるも、どのチャンネルも不愉快な音を立てる白黒と砂嵐にしかならない

あれ、何で?



…あぁそう言えば一昨日くらいに台風が来てるって言っていたような…


もしかしてと思い窓の外を見れば、どうして今まで気付かなかったのか不思議なくらいに荒れた天気であった


「うわ〜やっばいなぁ、家洗濯物そのままだ…」


この荒れた天気では依頼客もこないだろう

と言うか家に帰ることすら難しそうだ



「…まぁしょうがないか、お菓子たーべよ」



今日はゆっくり過ごせそうだ






ザァァァァアアアア

ガタガタっ






「………うわぁー…」

雨と風の音がすごい

そう言えば台風ってこんなんだった



…………


ちょっと、心細くなってきたとかじゃないけど




暇だし



「アザゼルさんたち呼ぼうかな」



いいよね


ちょっと前に悪魔をそんな軽く呼ぶもんじゃない、痛い目をみると身に染みていたはずだが


存外人は過ちを繰り返すものである


後に彼女もそれを身を持って体感することになる




さっそく呼び出す前にアザゼルとベルゼブブにメールで連絡を入れる

事前確認はルールのひとつに今やなっている



〜♪


「アザゼルさんから…って、…今日来れないんですかぁあ…」


アザゼルさんのくせにと悪態をつき、ガックリとうなだれると2通目の着信がなる



「あ」


ベルゼブブさんからだった



(わかりました。十分後以降にお願いします。)



相変わらず業務的な短い文だが佐隈は満足げに口元を緩ませ


四階、鉄の扉の向こう側へと足を急がせた





次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ