短編小説

□10000hit記念フリー小説(緑青)
1ページ/4ページ


『感謝の気持ちは言葉にせずに』



ブルーは不機嫌だった。
原因は、目の前でパソコンの画面と睨めっこしているツンツン髪の少年だ。

「仕事で忙しいんだ。仕方ないだろう」
これが、彼の言い分だった。

彼女とてそれは重々承知している。
いつもなら世話を焼いたりもできるが、折しも今日は夏祭りの日だ。たまには二人で楽しく過ごしたい、と思うのだった。

それからどれくらいの時間が経っただろうか。彼女はとうとう痺れを切らし、立ち上がった。

「もういいわ、一人で行くから」

「待て、ブルー」

「何?」
彼女の不機嫌な言い方に、グリーンは少しばかり怯んだ。

「あと30分だけ待っていろ。そしたら一緒に行こう」

「え、本当?」
ブルーは一瞬、自分の耳を疑った。
彼の方からそんなことを言ってくるとは思ってもいなかったのだ。

「ああ、本当だ。だからお前はその間に準備を済ませておけ」

「分かったわ!」
嬉しそうにそう言うと、彼女はトキワジムを後にした。

「・・・どうもオレはあいつに弱いらしいな」
彼女が出て行くのを見送ったあと、彼は言った。
そしてパソコンに向き直った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ