■書庫U
□紡想曲
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空を見上げるとそこは現世ではなく、尸魂界。
―――藍染の一件から随分な時間が経過していた。けれど、負傷した井上や佐渡がまだ完全に回復していないため、もう暫く魂界にいることになるだろう。
もう共に戦うことはないかもしれないが、ルキアも重傷だと聞いた。
一護は気分的に外の空気が吸いたくなり、廊下へと踏み出した。裸足の所為で床がひやりと冷たい。今の季節が冬でなくて良かったと安堵する。
――と、息を吐いた瞬間、目の前が真っ暗になった。
「…わっ!!」
自分の声が廊下に響き、慌てて口を噤む。何かにぶつかったようだ。しかも、俺より背の高い何かに――…
見上げると、目の前には、白哉が立っていた。白哉は驚いて叫んだ俺を、ただ静かに見つめていた。けれど、不思議と不快感はなかった。
動揺した心を落ち着けて、今度は俺が白哉を見る。端整な顔立ちに長い黒髪。綺麗とも呼べるその容姿に、思わず魅入っていた。
「………」
無言のままの白哉を前に、俺は自分が長いこと白哉を見つめていたことに気付いた。