■書庫T

□素晴らしい料理
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うっすらと、日の光が浮かぶ。

『あぁ、朝だ…』

小鳥の囀りが聞こえ、朝が来たんだと覚る。自分が生きていることを実感する。


そして、自分の部屋が少し綺麗になっているような気がすることに気付いた。

『…?』

辺りを見渡すと、部屋全体が掃除されたように綺麗になっていた。枯れそうな草木も古ぼけた棚や机も、全てが綺麗になっている。

『昨日の夜まではこんなに綺麗じゃなかった…よね』

記憶を遡るが、こんなことをした覚えもされた覚えもない。ましてや、人を部屋に入れるなんてしたことがないので。

『じゃあ、一体何が…?』


ジャーーーーー…

そこまで考えをめぐらせた時、台所のほうから水の音が聞こえた。

『これは…水道の音?』

誰かいるんだ。誰…だろう?何でオレの部屋にいるんだろう?

相手もその真意も見当が付かないまま、台所へ向かった。




台所には、昨日会ったばかりの青年・イタチが立っていた。昨日は暗がりで分からなかったが、思っていたより背が高いようだ。ナルトが来た事を知り、イタチが振り返る。

「ああ、ナルト君。おはよう」
「えっ、ぁ…、お、おはよう…」

『いや、挨拶なんてしてる場合じゃないってばよ!!』

いつもと違う雰囲気に流れそうになったが、かぶりを振って頭から消し去る。

「あ、あのさ…!」
「ナルト君、朝食は?」
「えっ……まだ、だけど…」
「今作るよ」

そう言うと、何か料理を作り始めるイタチ。

『先に問いかけたのはオレなのに』と不満を抱いていたのに、何故だか答えてしまった。自分でも分からないが、“否応無し”という言葉がしっくりくるような気がする。

でも、やはり聞かないままは気持ち悪い。

「あのさ!イタチ兄ちゃん!!」
「…ん?」
「何で、此処にいるんだってばよ?」

「昨夜、君の護衛をすると言っただろう」
「そっか!! ……じゃあ、ずっと一緒?」
「そう、だな……ナルトが嫌だと言わない限りは」

「そ、そんなこと言わないってばよ!!」
「俺みたいな者は必要ないんじゃなかったのか?」
「むっ……」

イタチ兄ちゃんが急に意地悪になった。
でも………

「ああ、ゴメンゴメン。気を悪く……」
「オレはっ!!イタチ兄ちゃんだから良いって思ったんだってばよ!!」

言い切ってから、自分がとんでもないことを言ったということに気付いた。ちらりとイタチ兄ちゃんを見ると、少し驚いた様子で、

「…そう言ってもらえるとは思ってもみなかったな………」

と、言ってくれた。何だか昨日から嬉しいことばかり続いていると思う。


ふ、と久し振りに笑った気がした。愛想笑いではなく、心からの笑み。相手がナルトだからなのか、それとも自分に隙が出来ただけなのか、それは分からない。

ただ、自分にもまだ少し人間らしい所があったのだと思った。
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