■書庫T

□面白いほど…
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イタチ兄ちゃんと一緒にいることが多くなって、まだそれに慣れない。きっと、無意識のうちに慣れてはいけないという思いがあるのかもしれない。慣れてしまったら、きっともう………

「………ねぇ、イタチ兄ちゃん?」
「ん?」
「イタチ兄ちゃんは初めてオレと会ったとき、何で森に居たんだってばよ?」
「……聞きたいか?」
「ん!良ければ…だけど…」
「そうだな…言ってみれば…気紛れ…か」
「?」


暗闇の中で、その日は暗部の極秘任務を請け負っていた。それが日常になってしまってから、随分経った。普段暗部で極秘任務を主にこなし、特別上忍としては極稀に任務をこなしてきた。

里の同僚たちからは、任務達成率100%と言われたこともある。しかしそれを嬉しいと思ったことなど、一度としてなかった。だからこそ、そのせいで疎まれることも多々有った。

けれど俺はそれをどうこうしようとする気は起こらなかった。元々、あまり他人と馴れ合う事は好きではなかった。これまで出来るだけ、他人とは避けて来た。

――勿論、親・兄弟でも同じ事。

非情と蔑まれても、イタチにとってはどうでも良いことの一つに過ぎなかった。


俺はたった今任務をこなし終えたばかり。任務内容は里への侵入者を抹殺すること。勿論、暗部のSランク極秘任務である。名目は大きく聞こえるかもしれないが、俺にとっては何でもない任務。

侵入者といえども弱い相手に違いは無かった。里に入ってくるだけの実力を持っているかと思いきや、そんな心配は不必要だったようだ。


返り血一つ浴びる事無く、何の感情も示さず、もう動く事の無い死体を見下ろす。

「………」

やはり、何の感情も浮かんでくることは無かった。直ぐに死体運びに専念しようと思い辺りを見渡す。


すると、ふと思い出した事があった。



そういえば―――…森に湖があると三代目から聞いた事がある。

別に何も用は無いが、行ってみるか…何処かに返り血があると母上に叱られるからな…


この前、血を落とさず家に帰り、母に叱られたことがあった。そのせいで血を落とせるところを探していたのだ。

勿論、叱られるのが嫌なわけではない。ただ、関わりを持ちたくないだけだ。それだけの理由。


しかしこの気紛れが、今後のイタチにとって大きな出来事に繋がるのであった。それは“運命”とさえ呼んでも良いもの。

月夜に照らされ輝く金色の髪を持つ少年に出会うまで、あと少し―――……



「…じゃあ、本当にただの“気紛れ”だったんだ?」

「ああ…けれど、それが思いも寄らない出会いのきっかけになった」

「っ!///そ、それはオレも同感だってばよ…///」

「…それは嬉しいな」


まさに『棚から牡丹餅』というのはこのことをいうのだろう。この世で右に出るものは無いだろうナルトと出会えたのだから…

「なぁ…何ニヤニヤしてるんだってばよ?」

「ふ…何でもないさ…」

本当に、ナルトには感謝している。人生の中で最大の出会いとも言えるだろう。

こればかりはもう、離すことは出来ないと…そう誓えるほど、自分は執着している。そう心の中で呟きながら、ナルトを優しく抱きしめた。目を細め、くすぐったいと言う様に頬を赤らめたナルトが見えた。



あの時、もしも俺が湖に行っていなければ、今も前と同じように任務をこなしていただろう。何の感情も持たず、何に対しても無関心だった。

それが、今と比べれば自分でも驚くくらいナルトに魅入られている。自分でも面白いほど……ナルトに執着している。





Fin.

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