■書庫T
□愛らしい君
1ページ/1ページ
いつもより朝早く起きたナルトは、ふとこんな事を言い出した。
「イタチ兄ちゃん!」
「ん?どうした…ナルト君…」
そう言った途端、急に顔を膨らませ、少し睨んで俺を見た。こちらにしてみればそれは上目遣いでしかないのだが…
己の理性を保ちながら、ナルトの真意を確かめる為、問う。
「何だ、どうしたというんだ?」
「……あのさ、“ナルト”って呼んで欲しいんだってば!」
「…」
ああ、それが気に食わなかったのか…と思い返す。そういえば一度でも“ナルト”と呼んだことが無かったな…
「呼び捨てだと親しく感じるでしょ?」
「…そうだな」
”親しく”
”他人から一目置く”
そういう事なら…と了解した。きっと俺の真意は掴めていないだろうが…
そして、あることに気付く。俺だけが呼び捨てというのもおかしくはないだろうか?
それならば………
「では、こうするか」
「え?」
「ナルト君も俺を“イタチ”と、呼んでくれるか?」
「…えっ!!」
俺の言葉に本当に驚いたようで、みるみるうちに頬を昂揚させるナルト。それが愛らしいと言えば、更に頬を紅く染めた。
「ん…分かったってばよ…///」
何をそんなに恥ずかしがるのか分からなかったが、これで一件落着だろう。
「ではナルト、これからは更なる親しみを込めて、だな」
「…何てこと言うんだってば!!///」
「良いだろう?何せ俺たちは…」
「もう何も言うなってば!!!」
思いっきり頬を紅く染めて叫んだナルト。しかし少し不機嫌な顔をすると、ナルトはごめんなさいってば、と言って謝る。
何だかんだ、結局は俺もナルトも互いを想っている。そう想うのは少し傲慢かもしれないが、こんな傲慢なら良いと思える。
「……ナルト?」
思いに耽っていたので気付かなかった。ナルトが喋っていない。いつもなら即座に口を動かしているはずなのに。
「……っ、もう!その声反則だってばよ!!」
いきなり怒鳴るナルトに少し驚いたが、その声に怒りは感じられない。まぁ、おそらく照れているんだろうと分かると、自然と笑みが零れてくる。
「なっ!!何が可笑しいんだってば!!」
笑いながらも可愛いと思ったからだと本当のことをいうと、
「……何を言うんだってばよ。そしたらイタチだって……カッコ良過ぎ///」
語尾が続くにつれ小さくなっていく。照れて俯く癖も愛しいと思う。
ナルトの全てが、愛らしいと思う。
Fin.
[書庫TOPに戻る]