■書庫U
□教えられたコトバ
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気づけば、シャマルは俺の目の前にいた。そしてその顔はいつもより少し焦っているようで。
「あの美女、絶対モノにしたかったのにさ〜…。ま!今はとにかく………」
いきなり腕を鷲掴みにされ、引っ張られた。
「逃げる!!!」
「え、えぇっ?!」
半ば引き摺られるようにして走りながら、さっきまでシャマルが話していた女性を見遣る。その女性は、こちらを指差しながら住民に警告を発していた。
「はぁ、はぁ、はぁ………」
「ったく…しつこかったなあの美女…ちょっと相手間違えたかな…?」
シャマルは後ろを振り返りながら毒づいた。結構走ってきたからもう大丈夫だろうか。
ツナは、息を整えてから、シャマルに話しかけた。
「ね、シャマル。ちょっといい?」
「あ?怪我でもしたのか?悪いが俺は男は―――」
「いや、そうじゃなくって、シャマルが喋ってたのって何?」
そう。ツナはこれが聞きたかったのだ。他の人には聞けそうにないし…(いるにはいるけど、絶対何か嫌なことに巻き込まれるし…)シャマルが一番の頼りだった。
「何…って……女を口説いてたわけよ。俺の色香で堕ちない女はいないぜ?」
シャマルは何を勘違いしたのか、自慢話を始めるところだった。そこは勿論制し、こちらの質問を伝える。
「………いや、そうじゃなくって、何語喋ってたの?」
「…ああ、それが聞きたかったのか。あれはな、イタリア語だよ。あの美女もイタリア人だったから、通じたわけだな」
相手もイタリア人…そうか、だからあんなに…って、そこから何であの女性は叫んだんだろ?…ま、いいか。