■書庫U

□教えられたコトバ
2ページ/8ページ

 気づけば、シャマルは俺の目の前にいた。そしてその顔はいつもより少し焦っているようで。

「あの美女、絶対モノにしたかったのにさ〜…。ま!今はとにかく………」

 いきなり腕を鷲掴みにされ、引っ張られた。

「逃げる!!!」
「え、えぇっ?!」

 半ば引き摺られるようにして走りながら、さっきまでシャマルが話していた女性を見遣る。その女性は、こちらを指差しながら住民に警告を発していた。

「はぁ、はぁ、はぁ………」
「ったく…しつこかったなあの美女…ちょっと相手間違えたかな…?」

 シャマルは後ろを振り返りながら毒づいた。結構走ってきたからもう大丈夫だろうか。

 ツナは、息を整えてから、シャマルに話しかけた。

「ね、シャマル。ちょっといい?」
「あ?怪我でもしたのか?悪いが俺は男は―――」
「いや、そうじゃなくって、シャマルが喋ってたのって何?」

 そう。ツナはこれが聞きたかったのだ。他の人には聞けそうにないし…(いるにはいるけど、絶対何か嫌なことに巻き込まれるし…)シャマルが一番の頼りだった。

「何…って……女を口説いてたわけよ。俺の色香で堕ちない女はいないぜ?」

 シャマルは何を勘違いしたのか、自慢話を始めるところだった。そこは勿論制し、こちらの質問を伝える。

「………いや、そうじゃなくって、何語喋ってたの?」
「…ああ、それが聞きたかったのか。あれはな、イタリア語だよ。あの美女もイタリア人だったから、通じたわけだな」

 相手もイタリア人…そうか、だからあんなに…って、そこから何であの女性は叫んだんだろ?…ま、いいか。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ