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□第零章 こけら落し
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「悪ィ、レナ。今日はちょっと行く用があってさ…」
「――え?」
それは放課後のことだった。
「だから、今日は宝探し行けなくなってさ…ゴメン」
私は圭一くんと宝探しをする予定だった。それを、ドタキャンされたわけだ。
「レ、レナ…?」
「…あ、ううん。それなら仕方ないよね。今度で良いよ。じゃあ、またね」
「ホントゴメンな!じゃっ!!」
彼が、見えなくなる。背中が…真っ黒に塗り潰されていった―――。
―――声が、枯れてゆく。足は、自然と―――圭一くんの家へと、向かっていた―――
「じゃあ、行ってきま―す」
「気を付けるのよ―!!」
彼…圭一くんのお母さんの声がした。暖かくて、優しくて、とても良いお母さん。
圭一くんは、家を出、歩き出した。その歩調はいつもより速い。
ほんの、出来心だった。…ただ、彼がどこへ行くのか、私の約束を破ってまでの用が何なのか、知りたかっただけだった。
―――ただ、それだけだった―――…。