■書庫T
□愛しむ証
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今日は“バレンタインデー”というヤツで、女が男に何か渡す日らしい。まぁ、自分はナルトに貰えるだけでとても嬉しいのだが…。
そんな事を思って俺、うちは イタチは暗い街並みを歩いていた。暗部任務が終わり、一息ついていたのだ。街を見遣り、いつもはこんなに賑やかではない筈だと思う。菓子店には大勢の女客が見えて、少し不憫に思った。
すると、目の前にはいつの間に来たのかナルトがいた。ぜーぜーと息を切らして顔は真っ赤である。
「イ、イタチ!」
「……ナルト…どうした?」
「あ、あのさ!…コレ受け取っ」
その時である。
ドタドタドタドタ…と幾つもの足音(かなり凄い)が響いてきた。何だとそこに目を向けると…
「「「イタチさーーーーーん!!!」」」
と、女達が群れを成して俺に迫ろうとしていた。
隣のナルトを見ると思い切り不機嫌な顔をしていた。コレはマズイと思い、声を掛けようとすると、
「イタチ!こっちだってば!!」
意外と頼もしく、ナルトは俺の手を引いて走り始めた。とても嬉しかったのだが今は逃げる事が先決なので、ナルトに従う事にした。
街並みを離れて後ろを見るとまだ女達は疲れることを知らぬようだった。
かなり引き離したとナルトは思っているようだが、実はあまり変わっていない。というより、逆に段々とナルトが疲れてしまっているように見える。
「ナルト……ちょっと止まってくれないか」
「?何言ってんだってば!今は逃げねェーと…」
立ち止まったナルトを少しだけ斜めに倒し抱き抱える。
「っ!!!ナ、何やってんだってばっっ!!!///」
先程から自分が走ったほうが速いのではと思っていたのだ。しかしそれではナルトが追いつけないだろうから抱きかかえることにしたのだった。
俺がしているのは所謂「お姫様抱っこ」というヤツ。だがこの際、仕方無いだろうと自己完結する。
ひょい、と忍ならでわの経験を活かして高く跳躍した。
「「「あぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」」」
と、物凄く残念そうな声がコダマした。
所は変わり、街とは打って変わって静かな場所に来ていた。
「へへっ」
ナルトが不意に笑ったので目の前のナルトに目を向けると、
「何かさ、俺だけが特別みたいで嬉しい」
「…いや、事実特別なのだが…」
「!ほ、本当だってば?!」
「あ、」
つい本音が出てしまった。少し気が抜けたのか…と少し自戒する。
「俺はナルトが好きだ」
「っ!!!///」
「…やはり、迷惑、か?」
「ううん!そんなコトないってば!!寧ろ…」
言いかけて止めたナルトを見遣ると顔が真っ赤であった。
「イ、イタチは…何でそんなに顔に出ないんだってばよ…」
「…」
そんなつもりはなかったのだが…いや、コレは元々か。
「オレもイタチが好き!」
「!」
その言葉は確かに俺が欲しかったもの。
「イタチがオレを選んでくれるなら…こんな最高な人生ないってばよ!!」
ニシシ、と照れ笑いするナルトがとても愛しく見えた。
「有難う…。俺もだ」
俺も知らずのうちに顔が綻んでいた。自然と心が清々しくなっていくのを感じた。