■書庫T
□愛しむ証
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「でさ、イタチって毎年ああなの?」
「ん?…まぁ…そう、だな」
「!!…予想はしてたけどそこまで…」
「ナルトが心配する事じゃない」
「するってば。オレ達って両想い、なんだろ?」
「ああ。勿論」
「…///イ、イタチってホントに顔に出ないっていうか…」
「俺としてはコレでも顔に出してる方だが」
「分かってるんだけどさ…あ、でもその方が嬉しいってば」
「…?」
「だって皆が知らないイタチの笑顔を、俺だけが知ってるってコトだろ?」
「…フ」
「あぁ!!今、鼻で笑っただろ!」
「いや、とても嬉しいよ」
「!!…その笑顔は不意打ち…///」
「何かさ、好きな人がモテるって嬉しいけど…やっぱ嫌だってば」
少し頬を膨らませながらこちらを睨むナルト。
「だが、そんな俺をナルトは好きなんだろう?」
「…はっ?!何言って…!!///」
「違うのか?」
「………違わない…///」
ごにょごにょ言いながら俯いてしまう。
そして照れ隠しなのかそっぽを向いてしまった。見ていて飽きない行動に、思わず笑ってしまう自分がいた。
「あっ!」
「?」
急に思い出したように声をあげたナルト。
「あのさ…さっき言いそびれたけど…コレ、受け取って欲しいんだってばよ!」
「…?」
ナルトが俺に差し出したもの。それは、会ったときに見た包装紙。
「これは…」
「鈍いってばね…バレンタインだってば!」
「……有難う」
「う、うん」
素直に礼を言うことがこれほど難しいとは思っていなかった。言えば言うほど、片言になってしまっているような気がする。
「……開けて良いか?」
「!!こ、此処で食べるんだってば?!」
「…何だ、他に良い場所でもあるのか?」
「ん、オレん家!」
「それはマズイ」
「…?何でだってばよ?」
「………それは、襲われても良いということか?」
「…は?」
「…………」
暫しの沈黙。
反応が薄い。いや、あまりにも薄過ぎる。まさか、意味が分かってないのだろうか…いや、それがナルトらしいと言えばらしいのだが…。
「…分かったってば、此処で食べて」
「………ああ」
包装紙を開くと赤と黒の箱が出てきた。
「それ見てイタチって感じがしたからさ」
「…」
ちゃんと考えてくれているんだな…と心の中で呟いた。箱を開けるとハート型のクッキーにホイップクリームが入っているお菓子が入っていた。所々クリームが薄い所があるので手作りだろうと分かる。
「頂きます」
「ん」
食べてみると、それは言葉で言い表せないほどの美味しさで…。
「ナルト…きっと良い嫁になるな」
「…は?!嫁?!」
「そうだろう?勿論」
小さく笑って問いかけると、照れているのか少し俯くナルト。
「う…ん…」
そんなナルトも、愛しいと思った。なにやら今日は嬉しい事が多いなと思う。
それも全てナルトがいるからだと知っているから、手放せない。無論、今更手放す気など毛頭ないのだが。
そこは賑やかな街並みから少しだけ離れた所。二人の会話が途切れることは無かった。