■書庫T

□唯一の未練
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瞬時に振り返ると、三代目が居た。

「イタチ―――…言われる事は、分かっているであろう?」
「―――はい…」

明日にでもなれば、指名手配されるであろうことは分かっている。全てを理解した上での行い。
ナルトの為―――そう思えば、何一つ怖くはなかった。

「イタチよ……有難う」

三代目…今、“有難う”と言ったか…?

「勿論、イタチ。お主は人としてしてはいけない重罪に当たる行いをした」
「…はい。分かっています…」
「しかし全て、“ナルトの為”であろう?」
「…!」

そうか、三代目…水晶で見ていたのか…それなら話は早い。

「勿論、いけないことだと…自覚はあるつもりです。」
「…」
「しかし、ナルトの傷つく姿はもう見たくなかった」

「………やはり、イタチにナルトを預けて正解だったようじゃの…」
「…?」
「うちは一族が滅んだのじゃ。今後、ナルトに対しての暴行などはなくなるじゃろう」

同胞殺しの罪は重い。しかし、それでナルトが少しでも助かるのなら…。

「イタチ、里を抜けるのだろう?」
「はい。…しかし、必ず戻ります」
「それは…ナルトの為かの?」
「勿論です」

「……そうか。お主の決意は承知した。聞いておきたい事があるのじゃが…良いかの?」
「…何でしょう?」

久し振りに聞いた三代目の声は、いつもより少し張りが感じられなかった。

「イタチ…これからどうするのじゃ?」
「それは…言えません。お許し下さい」
「いや、問うたのは答えを聞きたいが為ではないのじゃ」
「…どういうことです?」

問いただす為ではないとすると、他に何か理由があるはずだ。

「ただ、戻るまでナルトの目に触れぬようにして欲しい」
「…」
「ナルトの記憶を一部消したのじゃろう?それが無意味になろう」

「…そう、ですね…勿論、ほとぼりが褪めるまで里には戻りません。
 それに、俺はナルトを守れるよう強くなりたい」
「分かった。では、もう里を出た方が良いぞ。忍が集まっては厄介であろう?」

「…そうですね、では…ナルトをお願いします」
「うむ。分かっておる」

頭を垂れ、深くお辞儀をする。これを懐かしく思い返す日がいつか来るのだろう。

そんなことを思い、踵を返した時には三代目は消えていた。きっと、火影室に戻ったのだろう。機敏さは年を取っても変わらないようだ。

流石、というべきか。



この里には未練は無い。この里“自体”には、だ。
たった一人を除いては……




全てはナルトの為に―――…
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