■書庫U

□ケンカの後は
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 授業が終わり、部活が始まる。けど今日はちょっと違くて。
 目の前には珍しく協力的な泉とキョドってる三橋。
「おーし、…んで、何だっけ?」
「あんねー、」 
 やっぱり泉はいい奴だなーと思いつつ、話しだそうとしたとき、がやがやと声がした。ガチャリと部室が開き、振り返ると阿部、花井、田島、沖がやってきた。
「あー………」
「お前ら何やってんの」
 特に阿部が厄介であった。俺を見るなり睨んでくるから。
「あ、あのな阿部、これは…」
 花井が仲裁に回るが、それは敢無く振り払われ、今度は田島がノッてきた。
「なになにーっ!!さっきの話〜っ?!」
(ここで説明しておくと、花井が田島に事情を話していたらしい)
「俺にも聞かせてよ」
 空気を読んだ沖が俺に話しかけ、ようやく本題に入ることができたのだった…。


「―――で、そんなわけだからさ、何か言いアイディアないかな?」
 瞳を輝かせながら尋ねてくる水谷に、水谷曰く「好きな人」というのが誰を指すのか一目瞭然であることは誰も口にしなかった(正しくは阿部が喋ろうとしたのだが、それは沖と花井によって止められた)。
「ん?ん?」
 水谷が興味津々にこちらを見てくるが、誰一人として口に出さない。それは、下手なことをして栄口からのしっぺ返しを恐れてのことだった。
「あれ、みんな集まってどうしたの?」
 その時、カチャリと音がしたのに誰一人気付かなかった。
 バッと声のした方へ向くと篠岡が新しくモモカンが買ってきたらしいボールを抱えながらやってきた。
「わぁぁぁああああーーーーーー!!!」
 何故だかみんな篠岡が来たと分かると一目散に逃げていった(田島と三橋は連れて行かれたといったほうが正しいが)。
「あ"あ"あ"!!!何だよみんなしてー!!」
「……?そうそう、今日は巣山くんと西広くんお休みだって………ん、水谷くん、どうかした?」
 俺と篠岡しかいなくなった部室で、篠岡が不思議そうに問う。
「ん―篠岡なら答えてくれるかなぁ…」
「ん?」



「あぁー栄口くんね?」
「えぇっっっ!!!」
「…あれ、間違っちゃったかな?」
「あ、いや、間違ってはいない、んだけど…ぁ」
 墓穴掘った〜とばかり頭を抱える水谷くんを見ていたら、本当に好きなんだな〜と感じた。
「それで、どうしたらいいのかってこと、だよね?」
「うん………」
 栄口くんなら何でも良いと思うんだろうけど…水谷くんは何かしてあげたいと思うんだろうな…

「ふふふ」
「…?」
「あは、栄口くん愛されてるなーと思って」
「え」
 笑顔と言葉が一致してないよ!!と叫ぶ水谷、それを笑う篠岡がそこにいた…
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