■書庫U
□ケンカの後は
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部室に入ると、赤くなった水谷と篠岡がこちらを向いた。
「何やってんの」
自分が発した声の冷たさに少し驚きながら、水谷を見下ろすと、水谷の顔がさーっと青くなるのが分かった。
「あ、あのね、これは…!!」
「俺は水谷に聞いてんだけど」
「………あ、ごめん…」
「………」
「………」
沈黙が部室に漂う。水谷が話し出さないせいで、その空気はさらに重さを増していく。
明日がどんな日なのか、きっと水谷は知らないんだろうな。
…いや、気にもしていないかも。
先に告白したのは、俺。そして先にキスしたのも…俺。
水谷は…本当に俺が好き?
友達の“好き”じゃないって、分かってる?
でも、それさえ怖くて聞けないでいる。情けないな…俺。
「もういい。俺、先行ってるから」
「あ、さかっ…」
俺へと伸ばされた腕を、ぱしっと跳ね除ける。
「俺、怒ってるんだよ」
「……っ」
哀しく歪む顔。俺の言動一つで変わる顔。
―――こんなこと、八つ当たりだって分かってる。水谷は悪くない。俺が…この黒い塊を抑えられないせい。
水谷は本当にこんな俺を好きなのか?
俺の気持ちをバカにするなんてことはしない奴ってことは知ってる…けど、本心から俺と付き合ってる?
水谷は…水谷は…
俺を、…好きじゃない?
その日、俺はそれきり一度も水谷と話さないまま、帰路に着いた。