■書庫T

□一人じゃない
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辺りは静まり返り、人の気配は無い。空は冷たい風を靡かせ、里を覆っている。

ここは、里が一望出来る場所、森。

里には街灯の明かりしか見えない。きっと、子供も大人も寝静まっているのだろう。



更に森の奥には、小さな『湖』がある。

近寄る者など数える程しかない場所。湖しかないこの場所に来る者の方が不思議がられる程である。



そんな場所に、小さな少年がいた。辺りは暗闇に染まっていて、月明かりで足元が見える程度の明るさしかない。しかし、この少年の金色の髪だけはそれに溶け込んではいなかった。

それは、暗闇に発光する蛍のような……輝き。



この少年、名はナルトといった。







今日も…また蹴られ殴られ罵られた。今まで何度もそれは繰り返されてきた。

慣れても、痛いものは痛い。大人たちは躊躇という言葉を知らないんじゃないかと思う。手加減は微塵にも感じられない。


こうなると本当に、自分の存在理由さえも分からなくなってくる。この湖で一人、泣き喚くことが出来たら、どんなに楽になれるだろう?



『お前さぁ、何でそうのうのうと生きてんだよ!』

そんなの、オレが聞きたい。


『お前なんて、誰にも必要とされてねェーんだよ!!!』

そんなこと――――…

オレが一番良く知ってる。


『死んじゃえ』

………もう、ヤダよ………



もう慣れたと思っていたのに………こんなにも、胸が痛む。

誰にも認められないのは苦しい。どんなに望んでも、得られない幸せ。


―――ううん、違う。

………幸せって、何だっけ?


湖の水面に映る自分の顔は、何となく情けなく見えた。
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