■書庫T

□何よりも大切な
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俺とナルトが出会って、およそ一週間が経った。



ナルトは出会った頃と比べると、随分と変わったように思う。身の回りの掃除や整理整頓も出来るようになり、普通に生活できるようにまでなった。


―――そして俺も、少し変わったかもしれない。

以前は人というものに全く関心が無かった。いや、人だけでなく、全てに於いて感心が持てずにいた。しかしそれを悲しいなどと思うことも、況してや他人を気にするなど、しようと思った事もなかった。周りは全て敵と思い、感情は押し殺し、里のために生涯尽くして死んでいくんだと思っていた。


しかし転機とも呼べる、ナルトとの出会いがあった。

ナルトは他の人間にはないものを持っていた。俺は知らずの内に、それに魅了されていたのかもしれない。実感は湧かずとも、俺は俗に言う『人間らしくなった』と云えるのだろう。

俺は今、ナルトを護衛するという任務を三代目直々に任されている。上から分かるように、その任務を俺は全く苦とせず、寧ろ楽しく遂行している。

理由はやはり、護衛する人物がナルトであるからだろう。本当に、自分でも驚いている。これ程惹かれるとは思ってもみなかった。


この思いを自覚したのはいつだったか…思えば出会った時、心は既に奪われていたのかもしれない。

こんな自分を里の者が見たら何というだろう。きっと、「信じられない」「病気じゃないのか」と声を上げる様子が目に浮かぶ。それほど、自分にとっては大きなことだ。


ナルトは異性だけでなく同性でさえも惹きつけてしまうものがある。実を言うと、ナルトが普通の少年でなくて良かったと思う。

普通の少年であったのならば、俺と出会うこともなかっただろう。そして、自分とは違う誰かと時を過ごしていたであろう。そう思うと、自分は何て幸運なんだろうと思う。

ナルトに出会えたことは俺にとって何よりも嬉しいことだ。だから今はただ、ナルトの傍で守っていこうと思う。



ナルトを守るためならこの身を投げ出してもいい。何よりも大切なお前だからこそ。




Fin.

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