■書庫T
□大好き
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今日は朝早くからイタチ兄ちゃんに起こされた。枕の横の時計を見ると、針はまだ5時を示している。
俺にとっては、早い時間。いつもならまだ熟睡中だと思う。眠い目を擦りながら、イタチ兄ちゃんに問う。
「ん〜〜〜…何だってばよ…?」
「ナルト君、今日は俺と一緒に、街に行かないか?」
「!!!えっ!街行くの?!本当にっ?!」
その言葉を聴いた瞬間、目が見開いた。そのお陰で、もう目はバッチリと覚めた。目を輝かせながら、イタチ兄ちゃんの言葉を待つ。
「最近は色々あって出掛けられなかっただろう?で…行くか?」
「ん!当ったり前だってばよ!!断る理由なんて見つからないし!!」
「…そうか、それは良かった。朝食を済ませたら直ぐ行こうか」
「おう!」
朝から笑顔のイタチ兄ちゃんが見れて嬉しくなった。何か、ホッとするっていうか…そんな感じ。
まぁ、それで幸せな気分になるのも現金だと思うけど……いいよなぁ?
朝食を素早く食べ終え、直ぐに支度をする。まぁ、支度と言うほど大層な服は持ってないんだけど。
「ナルト君、用意出来たか?」
「う、うん!」
後ろから声を掛けられ一瞬ドキっとした。
「じゃあ行こう」
ドアを開けて外へ出た。すると、目の前には大きな太陽。
「わぁ〜〜!」
5時に起きた時の景色とは全く違い、晴れ晴れとした陽気。自然と心まで明るくなってくるような天気だ。
「すっ、凄いってばよ!!」
「これは…出掛け日和だな…」
少し嬉しそうな表情を見せるイタチ兄ちゃん。今日は笑顔がやけに多くて珍しいな〜とも思う。
けど、オレは早く街に出掛けたくて、イタチ兄ちゃんの腕を引っ張った。
「早く行こうってば!!」
「そんなに慌てなくても街は逃げないだろう?」
少し困ったように笑うイタチ兄ちゃん。でも、オレはそんな理由で急かしてるんじゃない。
「違うってば!オレはイタチ兄ちゃんと歩きたいんだってばよ!!」
「…そうか…じゃあ、ゆっくり歩こうか」
そう言われ、手を握られた。そして含み笑いのイタチ兄ちゃん。
何より、イタチ兄ちゃんと出掛けられることが嬉しくて仕方がなかった。
そうして少し時間は掛かったものの、漸く歓楽街に着いた。久し振りの歓楽街は何だか凄く…華やいでいた。何故だか凄い盛り上がりようで…何だか違う世界に来たみたいに…。
「な、なぁ…此処って木ノ葉の里…だよなぁ…?」
「…?ああ、勿論そうだが…。どうした?」
「いや…何か盛り上がり方が尋常じゃ無いってばよ?」
「………まぁ…良いじゃないか」
イタチ兄ちゃんの間が少しだけ気になったけど、気に留めることも無く足を進める。よく見ると周りにはカップルばかり。え、と…これってば……どういう…コト?
「イ、 イタチ兄ちゃ…」
見上げればイタチ兄ちゃんの周りには女の人たちが大勢集っていた。
あ、何か…凄く…
寂しい、って感じだってばよ…
「……っ」
こんな顔は見せられまいと俯いた。でもイタチ兄ちゃんは、無言のまま優しくオレの手を握ってくれた。
「…っ!」
驚いて顔を上げると、イタチ兄ちゃんの少し怒った(よく見てないと分からないけど)顔が見えた。
あ、少し…怒ってる?
何でイタチ兄ちゃん……?
「消えろ」
イタチ兄ちゃんが言った途端、女の人たちは少し驚いたように散らばった。でも物陰からヒソヒソと聞こえるのは気のせいかな…?
「イ、 イタチ兄ちゃん…?」
「すまない…折角ナルト君と来れたのに寂しい思いをさせて…」
「…!」
イタチ兄ちゃん、オレのコト分かってたんだ…
「…ううん…だ、大丈夫だってばよ?」
「………」
イタチ兄ちゃんを心配させたくなくて、嘘をついた。でも、本当は………
「……ごめんなさい。…やっぱり、一緒が良いよ……」
ふっと笑って、イタチ兄ちゃんは言った。
「ああ、知ってるから大丈夫だよ」
イタチ兄ちゃんの前でだけは、本当の自分を出せる。オレが素直になると笑ってくれる。だから………もっと素直になれる。
「何かさ、今のイタチ兄ちゃん…凄く格好良かったってばよ!!!」
「………ああ、ありがとう」
思わず見惚れるくらいの微笑み。オレは長い間、その笑みの虜になっていた。