■書庫U

□久しい碁
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私とヒカルが出会ってから、一ヶ月が経つ…。



ある時、ヒカルの叔父の蔵にある碁盤に眠っていた私に気付いたのが、ヒカルだった。それから生活を共にするようになった。

私は碁の『神の一手』を極めるため、長い年月を経て現世に蘇った。碁を打つために現代に蘇ったのだから、碁を打ちたくて仕方がなかった。


けれどヒカルは―――……

「……はぁ?囲碁?何だソレ」

本当に私は信じられなかった。この世に碁を知らぬ子供がいるなど―――誰が信じよう?



ある時のこと。私が丁寧に囲碁を教えても、

「ここはこうで、こういう時には……」
「だぁ――っ!!もう良い!!止め止め!」

と、いった風に全く聞く耳を持っていない。囲碁を打つために現世に蘇ったのに、何故囲碁を知らぬ子供に出会ってしまったのだろうかと、ただただ、残念だった。

「ヒカル……囲碁をやってはくれないのですか?」
「またその話かよ?そんなにやりたいなら自分で打てば良いじゃねぇか!!」

(それが出来れば苦労はないのに……)

その的を射た事実が、重く私にのしかかる。本当に、自分で打てたらどんなに幸せか――…

「……佐為?」
「………」

その時、ヒカルは私の顔を不安そうに覗き込んだ。

「はっ、はい!何でしょう?」
「お前、さ……囲碁そんなにやりたいか?」

「……ヒカル…!今…何と?!」
「………」
「……ヒカル!!」
「叫ぶな馬鹿!だから!!たまにちょっとだけなら、って思っただけだよ!!」

その時、今までヒカルに打たせて貰えなかった不満も苦痛も、全てがなかったかのように、私は幸せに包まれていた……

「だから、その代わりにさ……!」
「……はい?」
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