LONG+B

□あいうた
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カラ…と開いた窓の音に、コンは飛び付く勢いで帰ってきた一護の様子を見た。瞬間、声を失う。

あまりにも傷心仕切ったその表情を見ているだけでこちらが辛くなる。

「…一護」

「コン…」

なんとか名前を呼べば相手も返してくれたけれど、それと同時に倒れ込んできた。

受け止めた身体はこんなに小さかっただろうか。

雨に濡れた身体は酷く冷たくて。

一護の体に入っているコンの方が一回りも大きく見えるのは何故。

オレンジの子供がこんなにも震えている。

いつもは気丈でまっすぐな瞳を揺らして。

コンは一護を抱き締めその細い背中をゆっくりと擦る。

「悪いな、コン…でも、今日だけだから。今日だけは…」

「解ってるよ、一護。今日はアイツの代わりにずっと傍にいる。好きなだけ泣いて好きなだけ弱音を吐いて」

コンの言葉に、堰を切ったように堪えてきた涙が溢れてとまらない。

幾筋も跡を残して次から次に流れていく。

コンはコンなのだから恋次の代わりになんて出来ない。

でも、今は誰かが傍にいてくれるのが一護は嬉しかった。人の温もりが嬉しかった。


明日からは強く生きるから。

今日だけは、涙を流す事を赦して。

弱い自分を、赦してください。

――いるかもわからない、神様へ。…愛しいあなたへ。


「恋次、ごめん…恋次、恋次…」



いっぱい酷い事言ってごめん。

傷付けてごめん。

大嫌いなんて言ってごめん。

本当は大好きだから。

厭きたなんて嘘だから。

遊びだったなんて嘘だから。

全部嘘だから。

本当は好きで好きで堪らない。

あなたは俺の全てでした。

だからこそ、俺はこの道を選んだのです。

俺のした事を赦してとは言いません。

もう二度とあなたに逢えなくてもいいのです。

ただ、あなたを想えるだけで良いのです。

ただ、あなたが好きなのです。愛しているのです。



ただ、恋次が………――







さよなら、

愛しいひと。








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