LONG+B
□空色 〜赤〜
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結果なんて初めから見えていた事。
地に這い蹲る男達。
その上に立つのはグリムジョーと一護の二人だ。
「弱ぇ…こんなんで良く突っ掛かってくるよな。その勇気を褒め称えるかどうか…」
「やめとけ。コイツ等はオマエを犯すとかほざいたんだぞ。むしろ東京湾にでも沈めて…」
「いや、やっぱり男としての機能を果たせなくしてやろう。二度と誰も…つーか俺を、犯すなんて言えねぇように」
男の急所に向かって足を踏み下ろす一護。踏まれた男は声にならない叫び声を上げた。
グリムジョーは初めて一護の黒い部分を見た。
一護の真の怒りに触れた者はもう二度と日の目を見る事はないかもしれない。大げさじゃなくて。
一護はケッと唇を尖らせてこの場を去って行く。
これは相当拗ねている。
同じ男から自分が受身の態勢で取られている事が不満なようだ。
まぁ、それは確かに男だからプライドとしてどうかとも思うが、一護が可愛いのだから仕方ない。
顔だって綺麗に整ってるし、あの性格を知ればもっとあの不良達だって夢中になるかもしれない。
もっとも、それはグリムジョーが許さないに決まっているが。
グリムジョーはその一護の背中を見てふと違和感を覚えた。
すぐさま呼び止めて駆け寄った。
「おい、一護」
「あ?なんだよ」
「オマエ、怪我してんだろ?」
「してねぇよ」
「バカ、隠すな。その腕見せてみろ」
ぐいっと引っ張った右腕に擦り傷が出来ていた。
血が滲んでいる。
先程、少し腕を庇うような仕草をしたのはこの為だったのか。
今の喧嘩で負ったのだろう。
一護は、しまったと言うように罰の悪い顔をした。
「こんなの、怪我って言う程のもんじゃないだろ。全然へーき…って!」
「ほらみろ、痛ぇんだろうが」
「傷にデコピンされれば痛いわ!」
ひりひりと痛む擦り傷は地味に痛く、一護は少し涙目になりながら反抗する。
「まったく、痛いんなら言えって」
「だから、アンタの所為で痛いんだろ!って、な、何してんだよ!?」
「何って、消毒に決まってんだろ」
グリムジョーは、掴んだままの腕を口許に寄せ傷を舌で舐めた。
鉄の味がするのも気にせず、赤色がなくなる程に。
「バカ、それ消毒って言わねぇ…っぅ」
ピリッとした痛みが走る。
けれどそれ以上に、傷が熱く頬も熱を持っていた。
じんわりと滲み出てくる血を、一滴も地に零さないようにとぺろぺろと執拗に舐めてくる舌。
時には吸い付いてくる。
「く……っ」
それが情事時の愛撫のように感じられて、一護は甘い声を漏らしそうになった。
血が止まるまでそれは続いて、最後にちゅっと音を立てて唇が離れる。
途端に赤い頬はさらに色を増した。
「感じた?」
その得意げな笑みが憎い。
羞恥に怒りも加わって、自分でさえも良く分らない感情のままに一護は怒鳴る。
「う〜もう知らんっ!」
腕を無理矢理振り切ってずんずんと道を進んで行った。
もう耳や首どころじゃなくて全身真っ赤だ。
「暫く俺に触んな!」
そんな捨て台詞を相手の顔も見ずに吐いた。
それを見てもグリムジョーはにやにやと笑みは崩さない。
楽しくて仕方がないのだ、一護を構うのが。