LONG+B

□空色 〜赤〜
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「一護」

後ろから抱き付いていやらしく腰の辺りを撫でてみると、やはりと言うか一護は触るなと激しく抵抗した。

でも、左手で顎を捉え耳元でもう一度名前を呼べば、ぴたりと大人しく止まる。

「…離せって」

「嫌だ。オマエのあんな表情見たら離せなくなんだよ。舐めただけなのに感じ過ぎだ」

「そんなの知らね…っ」

「なぁ俺の家行こうぜ」

「それって…」

その意味が分からない一護ではない。

グリムジョーの甘い声にドクンと胸が高鳴る。

否定の言葉がない事は良いと言う意味だろうととったグリムジョーは、一護の顔を横に向かせて唇を合わせた。

「ん…っふ…」

啄むキスから深いキスへ。

ぬるりと舌を口内に差し入れれば、一護の舌が応えるように絡んでくる。

唾液を交換するように互いの口に舌を行き来させた。

そんな事をすれば一護の身体の力はすぐに抜けきって、グリムジョーに凭れ掛かった。

「ばか、これじゃ歩けねぇよ」

「心配すんな。お姫様抱っこしてやる」

「それはやめろ。そんな事すれば即座に帰ってやる」

「歩けねぇんじゃ無理だろ」

「じゃあ俺が立てるまで待て」

「それじゃオマエに煽られた俺がもたねぇ」

「うぐっ……」

言葉に詰まる。移動手段が思い付かない。

「…まったく」

見かねたグリムジョーは溜息を吐いて一護を離した。

当然、一護はどさっと地に落ちる。

「てめっいきなり何しやがる!腰打ったじゃねーかっ!」

痛む場所を押さえてグリムジョーを睨むが、彼は背中を向けて屈んでいた。

その行動の意味が解らなくて首を傾げると、グリムジョーは肩越しに視線を向けてきて。

「ほら、乗れよ。これなら文句はねぇだろ」

背中に乗れと言う。おんぶだ。

これなら姫抱きよりも幾分かましではあるが、恥ずかしさはまだ残る。

それでも方法はそれだけしかないし。

「お、おう」

グリムジョーは、頷く一護の腕を引っ張り背に担いだ。

「誰かに見られると恥ずかしいから速くな」

「出来るだけな」

「でもあんま揺らすな、酔う」

「無茶言うなよ」

時間は夕方。

青から橙に変わった空の色は、橙から赤みを帯びてきていた。

赤い夕陽が沈むのを揺れながら一護は見ていた。

「グリムジョー」

「ああ?」

「アンタって意外と優しいのな」

「今更気付いたのかよ」

「それに…いや。何でもねぇ」

「?」

「いいから、早く行こうぜ。気が変わっても知らねぇぞ」

「そしたら、またその気にさせるだけだ」

自信ありげなグリムジョーの顔は一護には見えないけど、その表情は分かる。

勝てないな、と思う。

グリムジョーのその強さには。

一護に向けられる瞳の優しさには。

惚れた弱みってのもあるかもしれないけれど、一護はグリムジョーには敵わない。

ふと笑みを浮かべて、隠すようにグリムジョーの肩に顔を埋めた。




『それに、グリムジョーはあったかいな』




End.
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