LONG+B
□空色 〜橙〜
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2.それは青空に似た
その日は7月に入ったばかりだというのに猛暑で、一護は啓吾に付き合わされて最近出来た美味いと評判の喫茶店まで涼みに行った。
確かにそこのパフェは美味しくて、満足感に満たされた一護は、軽い足取りで帰り道を歩いていた。
このまま帰れば家に着くのは6時30分。7時の門限までには充分に間に合う。
人気が少ない住宅街に差し掛かった時、微かに人の話し声が聞こえた。
一護の眉間の皺が寄る。
それは話すというより明らかに言い争っていて、声の後に鈍い音がした。間違いなく、近くで喧嘩が起こっている。
角を曲がればそこは修羅場だった。
あちらこちらに散っている紅い血。
地面に伏している数十人の男たち。
その中にたった一人立っている男。
一護の琥珀の瞳に飛び込んできたのは浅葱色。青空に似た浅葱色だった。
立っていた男が、最後に相手したであろう男の髪を掴んで立たせる。
「ハッ、俺一人にこの様かよ!!云っただろ?何十人連れて来たトコで結果は同じだってよ!!」
「っかはっ!」
膝蹴りを鳩尾に決めれば、ドサッと崩れて動かなくなった。
伏している男たちで意識を保っている者はもういない。
最後に頭を蹴ると、勝者の浅葱色の男は一護を振り返る。
「ぁあ゙!?何だテメー」
髪と同じ色の瞳が一護を捕えて睨みつけた。
普段人の名前を覚えるのが苦手な一護であるが、眼が合った瞬間にこの男の名が頭を過ぎる。
「…グリムジョー、ジャガージャック……」
知らずと口が動き呟けば、男──グリムジョーは口端を上げて笑った。
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