LONG+B

□空色 〜橙〜
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3.離れない色


戸を開ければ感じる視線。賑やかだった教室を途端に静けさが包む。

「い、いいい一護ッ!?どうしたんだよそのキズ!!」

「タダの喧嘩」

吃る啓吾に短く答えて、心配そうな水色の横を通り過ぎ自分の席に着くと、静かだった教室内がざわめき出す。

一護がキズを作って登校してくる事は稀にあったのだけれど、それはいつも掠り傷程度だった。

その髪色ゆえによく絡まれて喧嘩するが、絡まれる度に一護は返り討ちにしてきたからだ。

しかし今回のキズはいつも以上に酷い。腫れてはないものの、やはり顔には擦傷や殴られた痕が目立った。

だから、教室内は喧嘩相手が誰なのかという話でざわめいているのである。

最も、皆一護の心配をしているのであるのだけれど。

しかし、話中の本人は考え事をしているのか、ざわめきは聞こえていない様子だった。


昨日は一護にとって散々な日になった。

間に合う筈だった門限に大幅に遅れた一護は、家に帰るなり父親に技を掛けられ、遅いと説教されて(殆ど聞いてなかったが)、風呂に入ればお湯がキズに染みた。

そこまではまだいい。

一護が不機嫌な一番の理由は、グリムジョーにあった。

何故かあの青空に似た色が頭から離れない。昨日からずっと浅葱色がちらついて、今も猶それは続いている。

きっとそれは、久しぶりに強敵にあったからだと一護は思っていた。

そして、決着をつける事が出来なかったからなのだと。

浅葱色が印象深かっただけなのだと。

決して一瞬見せた笑顔の所為なんかじゃないのだと、僅かに芽生え始めていた筈の恋心を、気付かないままに心の奥底へと沈めた。


窓際の自分の席から空を仰げば青が広がっていて、またあの男を連想させる。

それが何だか腹立たしくて、一護は深く溜息をついた。

とその時、窓下に見える校門の方が騒がしい事に気付く。

目線をそちらに向ければ今一番見たくない人。

一護が不機嫌な原因がそこにいた。



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