小説

□それは懐かしい
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「これだから菊はまだまだ子供アルよ!」


流石に四千年生きている耀に比べたら自分なんて全然ひよこっ子だろう。
なんて熱い頭でぼんやりと考え
(口に出そうと思ったが止めておいた)

自分の家にやってきた耀を接待しなければ、と布団から身を起こそうとした。


「ちょ、何してるアルか?熱があるのに無理してんじゃねーアル!」


が、耀によって布団にムリヤリ戻され、プンプンと説教されてしまった。
客が来ているのに寝ていろとは何と歯がゆい
けれど事実、体は重くあまり動ける状態ではない。


「普段から体調には気をつけろって言ってるアル」

「・・耀さんは相変わらず元気ですね」

「それは当たり前あるよ
毎朝漢方薬飲んでるアル」

「でも万が一風邪がうつったら大変ですよ
もうお帰りになられたらどうですか?」

「お前の家では看病しにきた兄を追い出すのが礼儀あるか?」

「・・あなたを兄と認めた覚えはありません」



自分の言葉をサラっと無視して冷蔵庫を漁っていた耀がいじけた様にこちらを振り返った。

その姿には幼げな雰囲気が残っている。

「病気なくせに口だけは減らないあるねー
今からお粥つくってやるから大人しくしてるヨロシ」


「・・申し訳ありません」

「謝るんじゃなくてお礼を言うある
そういうトコ昔から変わらないあるね」



そして優しく彼は微笑んだ。
それは自分が幼いころに憧れていたソレと寸分変わらずに残っている。



「早く元気になるヨロシ
そんな菊は見たくないある」


懐かしい気持ちが胸に蘇り、心地の良い空気が身体を包んだ。



「はい、そうですね
・・兄さん、有り難う御座います」


「え、え、い、今何て言ったあるか?!
もう1回言うある」


「嫌です」

「そんな笑顔で!」




偶にはこんな懐かしい雰囲気も、良いものだ。



なんて耀にはバレないように、微笑んだ。


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