novel(GS)

□不器用なふたりの距離感
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眩しく照りつける太陽の下。
君がいるであろう重厚な建物を見上げる。

君はきっと、忙しく働いていることだろう。










『 不器用なふたりの距離感 』












コンコン、と扉を叩いたのち、そのノブに手をかける。
どこの執務室よりも多く尋ねているこの部屋。


「失礼するわ」


書類に目を落としていたその部屋の主は顔を上げ、少し驚いた表情を見せた。


「…メイ。
 随分と久しぶりだな」

「お久しぶりね、レイジ」


彼は忙しく、私もあまり日本にいることは少なく、
捜査などで一緒にならない限りはあまり会うことはない。
しかし、こうして近くまで来た時には挨拶をしにこの部屋まで行ったりはする。

私は、レイジが座っているデスクの前まで歩き、そこでじっと彼を見つめた。
そして、彼が疑問の表情を浮かべたところで、ひとこと言う。




「レイジ、元気?」






「……は?
 いきなりなんなのだ、メイ」

そんなにあらたまって聞くことでもなかろう、とレイジは眉をひそめる。
確かに、幼い頃から共に父の元で育てられ、私たちはお互いのことをよく知っている。
今更、元気かなどと聞くのは少しだけおかしい気もする。


「つい先程、そこで偶然会ったある人物からそう聞かれたものだから」


答えると、レイジは何かに気づいたように目を大きくさせた。


そう、それはつい先ほどのこと。






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