novel
□我が輩だけを
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家に帰ると、いつもの様に、我が輩の可愛い可愛い妹が、出迎えてくれる。
しかし、今日はこいつが、憎くて憎くて仕方無い。
「兄様!お帰りなさいませ。今日も大変でしたね…」
我が輩があげた、頭のリボンを揺らしながら、歩いてくる。
我が輩は、リヒのドレスの襟を掴むと、壁に勢い良く押し付けた。
バンッ
鈍い音が響く。
「っ痛っ!!に、兄様…?」
リヒの白い顔は苦痛に歪む。
「リヒテンシュタイン…?我が輩に隠し事は無いであるか?」
つとめて、優しい声で話し掛ける。
リヒの肩は震えている。
脅えているのか?
我が輩を裏切っておいてッ!!
襟を掴む手に力を入れる。
「あっ、ありません…」
…嘘だ。嘘だ嘘だウソだッッ!!!!!
「貴様、我が輩が出掛けている間、男と会っていただろう?」
リヒの肩がビクッと跳ねる。
正直だな…
「会ってませ「しかも!!我が輩達の敵、オーストリアなんかと!!!…アイツは貴様を狙っているのだぞ?いつもアイツから守っているのは、誰であるか?なぁ、リヒ!!」
リヒの目は、色を失っている。
口をしきりにパクパクさせ、何か訴えようとしている。
「に、兄様は何故、オーストリアさんを嫌うのですか?…昔は仲が良かったと…」
リヒのその言葉に、幼い日の思い出が、フラッシュバックする。