novel
□食い違い
1ページ/2ページ
「だぁかぁらぁ!!!違うって何回言ったらわかんねん!!」
昼休みの食堂に、馬鹿デカい声が響きわたる。
否、馬鹿なのは声のデカさだけじゃねぇ。
アレの良さがわかんねぇとは、コイツはもう相当の馬鹿である。
いや、もう馬鹿通り越して阿呆だな。アホ。
まじ意味わかんねぇ。
昔みてーに殴りてぇ。
「何でお前、そんなもんつけれんの!?わっけわっからへん!!絶対マズいやんそんなん!食えへんやん!!」
ブチ
俺の額から、血管が切れる音がした。
「んだとテメェコルラァァァァア!!!あ゙ぁ゙!!?」
バンっと勢いよく机を叩いて立ち上がる。
さっきのセリフは聞き捨てならねー
俺の、俺の食をバカにしやがって…!!!
「てっめーこそ、んで"焼きそばパン"に"ケチャップ"かけれんだよ!!っざっけんな!!!この、悪食ケチャラー!!」
「はァァ!!?お前は何で"マヨネーズ"なんてもん、かけれんの!?つか、マイマヨとかキッモイねん!!!専用ケースに入れてくんな!味覚破壊マヨラーがッ!!!!」
「あぁん?てめーマヨ様の素晴らしさわかってねーだろ!マヨ様は万能なんだぜ!何にでも合うからなァ…」
「うっわ、ありえへん。たかが調味料に"様"つけとる。馬鹿っちゃう?ケチャたんだってみんな試しとらへんだけで、未知の扉開けるねん!ケチャたんなめんなゴルァ!!」
「つか、てめーも"たん"つけてんじゃねぇか!この変態ショタペド野郎!!!」
「黙れ!ロリコン似非紳士!!!」
「せめて"ブラコン"って言えぇぇぇ!!!!!」
…なんて、くだらないやり取りに俺もそろそろ飽きてきた。
だが、この中二病患者はまだまだ収まらないらしい。
つか、俺ら何てショボいことで揉めてんだ。
だっせ。
でも、マヨを馬鹿にすんのは腹立つ…
ちら、と窺った先には、すきだらけで喚くアントーニョ。
「…やから!マヨネーズはカロリー高いねん…って、んぅ!!!?」
奴の五月蝿いケチャまみれの唇を舐め上げた。
「な、な、な…!!!?」
ふ、真っ赤になってやがんの。
あわあわと慌てる彼に、挑発するように囁いた。
「そんなに美味いんなら、俺にも味わわせろよ……な?」
「!?」
「てめぇの口から、よ。」
そう言って、今度はキスを落とすとトマト味。
うぇ。
やっぱマヨネーズだろ………
「…アーサーのばぁか。」
そう、憎たらしいことを言って、今度はどちらからともなくキスをした。
脂っこいトマトの味がした。
「若気のいたりってやつかねぇ…」
遠くで食堂のおばさんとフランシスが呟いたのが聞こえた…ような気がした。
食い違い
(…でも一番好きなんは、アーサーの味や。…なんて言わへんけど。)
fin.
→
後書き