novel
□キャラメル
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「まーたお前はそんなもんばっか食ってんのか。太るぞ、メタボ。」
頭上から響く罵声に、眉毛を吊り上げながら振り返る。
「なんだい、アーサー?いきなり家に入ってきたと思えばそれかい?」
見下ろすエメラルドと視線を絡める。
手に握られたケーキの包み紙もそのままに。
「お前、あんな髭の作ったケーキ食べてるのか?…有り得ねぇ。」
アーサーは、彼の紳士的な何かである太い眉毛を思いっ切り下げて言う。
「うるさいな、君は。大体、料理下手な君がそんなこと言える立場じゃないだろう?マトモな料理作れるようになってから言うんだぞ!!」
「黙れ。仮にも弟であるお前がフランシスの作ったもん食べてるなんて気に入らねぇ。」
そこまで言うと、アーサーは少し考えるようにして、ニヤッと口角を吊り上げた。
「俺が美味いスコーン焼いてやるよ!紅茶も淹れ「紅茶だけもらうよ。と言うか、俺はもう君の弟じゃないしね!」
満面の笑みで答えてやる。裏には黒い気持ちを隠しながら。
「…即答だな、オイ。いいからキッチン貸せ。」
アーサーは半ば強引にキッチンへ向かった。
…まったく。
"太る"とか言ったのは一体誰だい?
アーサーのスコーンなんて食べさせられたら、それこそメタボどころじゃないんだぞ!
命に関わる問題だ…
ハァ…
俺は溜め息を一つ吐くと、キッチンに立つアーサーへ苦笑いを洩らす。
それでも、そんな君でも、俺は離れられないんだけどね。
ほのかに香ってきたロイヤルミルクティーに、俺はうっとりと瞼を下ろした。