宴会。

□もう一回言ってみて
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俺は長次が好きだ。

好き。

そして多分、長次も俺のことが好きなはずだ。

自惚れじゃねえぞ。

なんたって俺たちは恋仲だからな。

本当だからな。

勘違いじゃねえからな。

俺の告白に長次は確かにOKしてくれた。

確かだぞ。これは。

曖昧な答え方ではあったけれど、確かに長次は俺を恋人として認めてくれた。

それはすごく嬉しかった。

だけれども、だ。

「恋人」という関係になってから俺は一度も長次から愛の言葉をもらっていない。

いや、俺はあげてるよ。

それはもうほぼ毎日。

好きだ。ってな。

おい誰だ今気持ち悪いっつったやつ。

長次は自分では言わないけれど、俺の告白はいつだって真剣に聞いてくれる。

長次が俺の告白に首を横に振ったことは一度だってない。

けれど長次自身が俺への愛を口にしたことも一度もなかった。

ただ黙って、俺の告白を聞き頷く。

それが日常茶飯事だった。

俺が長次を好きな気持ちは初めて告白した日から何も変わってはいない。

俺が長次に毎日のように好きだって言うのは、何かを確かめるためではない。

ただ純粋に、好きだからだ。

好きだから、好きだって言う。

ただそれだけのこと。

あれ?待てよ。

てことは長次が俺に好きだって言わないってことは、長次は俺が好きじゃないってことになるのか?

いやいやいや。

馬鹿言っちゃいけねえよ。

好きでも言わないってことだってあんだろ。

たまたま俺は言うタイプなだけで。

言わないやつだってきっとゴマンといるさ。

だから長次も言わないだけで、俺への愛は持ってくれてる。んだ。

多分。

愛だって。やだ〜

とか言うなよ。

すさんだ社会でも変わらないのは何か。

はいその通り。

愛ですね。

愛と太陽の美しさは一生変わりません。

これ絶対。

あれこれ今俺いいこと言ってんじゃねえか?

引くなよ引いたら負けだぜ。

ていうか俺こんなキャラだっけ?

まあいいや。

だいぶ話がそれたけど、

とにかく。

長次は愛を口に出さないタイプだってことだ。

もちろんそれも悪くはない。

現に俺はそれでも十分幸せだからな。

だけれど。

もう一度言うが、俺は今の状況が決して嫌いではないし長次のことも大好きだ。

だけれども。

欲を言えば

欲を言えば

やっぱり俺だって

長次からの愛の言葉が欲しい。















「長次、好きだ」

今日も俺は最愛の長次に渾身の告白をする。

長次は読んでいた本から顔を上げ、俺の顔を見てからまたすぐに本に顔を戻した。

やれやれ、といった感じで俺は背後の木に寄りかかる。

静かな木陰はときおり優しい風が吹きなかなか居心地がよかった。

ま、正直それよりも俺は長次の隣が居心地いいんだけどな。

笑うなよお前。

長次はさっきからずっと茶色いしなやかな髪を垂らし一心に本を読んでいる。

その横顔はちょっと大人っぽくて俺はドキドキしていなくもなかったりして。

本当は長次としゃべりたいんだけど読書を邪魔すると長次は怒るから俺は黙って隣に座っている。

俺?俺は本なんか読まないよ。

だってどっちかっつーと武闘派だから。

頭より体使いたいの。

しかし読書している長次の隣にいるのは嫌いじゃない。

本読んでる長次可愛いんだもん。

「……」

じっと長次を見つめてみる。

それでも相変わらず長次は俺への反応をまったく示さない。

口を開こうともしない。

そう。口を開こうともしないのだ。

あーあー。

まただ。

ため息をつきそうになる。

また今日も、長次は俺に愛の言葉をくれない。

「…長次、好きだ」

さっきよりも小さな声で言ってみる。

何も変わらないのだけれど。

むなしくなった俺は長次から視線を外し無意識に座り直そうとした。

何の意識もしていなかった。








「   」









一瞬時が止まったかと思った。

急いで長次を振り返ると、長次は今まで見たことないようないたずらっ子のような笑みを浮かべていた。

どこか優しく色っぽいその笑顔に俺はドキッとした。

そして一気に頭が冴えると俺は顔が真っ赤になった。

「ちっ」

俺がろれつの回らないまま何か言おうとすると長次はまたすぐに本へと目を落としてしまった。

「長次っ」

長次は顔を上げない。

ただ、下を向いたまま彼はどこか笑っているようにも見えた。

「なぁ長次!今なんて言ったんだ!?」

ちゃんと聞かないでしまった。

「なあ長次!今っ」

お願いだから。

今度はちゃんと集中しておくから。

しっかり耳に残しておくから。

だからなあ長次。

「今のっ…」


















/もう回言ってみて









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けまちょけまつり!様に提出させていただきました。食満キャラ崩壊!(土下座)

ありがとうございました!



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