宴会。

□KOUYOU
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もみじ、と彼が言った。
紅く染まった葉が一枚はらりはらりと地面に落ちた。
なんて美しいのかしら、秋って素敵ね。
そんな内容のことをタカ丸が言ったから
俺はそうだなと適当な返事をした。
隣に腰かけた彼の手を探り見つけそっと握った。
そうしたらその手が予想外に冷たくてドキッとした。
恐れのような感覚だった。
冷え症?
そう尋ねたら彼はううん、と首を横に振った。
だけれど血圧は低いよ。
彼が薄い笑みのままそう言ったから俺はそれは関係ないだろうとわざと可笑しそうに大げさに笑いながら言った。
そうだね。
と彼が笑った。
安心した自分がいた。
雪も一緒に見たいね。
と突然彼が言った。
俺は黙っていた。
何も言えなかった。
今度は俺が薄い笑みを浮かべていた。
なんだか自分がとてもかわいそうな奴に思えた。
ごめんな。
呟くように俺が言ったら
優しいより正直な方がいいよ。
と彼が明るい笑顔で言った。
ありがとう。
お前は優しいな。
ごめんな。
俺は優しくないんだ。
正直にお前を傷つけるより
優しくお前を騙した方がいいんだろうけど
あいにく俺はそれができない非情な男で
お前はそれができる優しい男だ。
ああ俺もそれができたらどんなにいいかしら。
だけれどできやしない
だって俺は優しくないから。
タカ丸
俺が呼んだ
なぁに
彼が応えた
好きだよ
俺が言った
何も言わずに
彼が笑った
お前はわかってくれているだろう
俺が優しくない馬鹿正直な野郎だと
いちょう、と彼が言った
彼の髪と同じ色の黄金に染まった葉が一枚ひらりひらりと地面に墜ちた。











    KOUYOU




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ほのぼのらぶらぶを書こうとしてたのに…

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