お題

□82 垣根
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82 垣根





「かきねの かきねの まがりかど〜」

「たき火だ たき火だ 落ち葉たきー」

「あ〜たろうか」

「あたろうよ〜」

「北風 ぴいぷう」

「吹いている〜♪」

「おい」

機嫌よく歌うタカオとマックスとは対照的に不機嫌を隠さない低い声が割って入ってきた。
ぴたりと二人は歌を止めると、声の主の方を見た。

「歌うのを止めろ」

「何だよカイ。せっかくいい気分で歌ってたのによ」

「まだ1番しか歌ってないネ」

タカオとマックスが口を尖らせてブーイングした。

「だから歌うなっと言っている。ガキじゃあるまいし」

カイがちっと舌打ちをした。
ひと目も気にせず道中を暢気に歌い歩いていることがカイの気に召さなかったらしい。

「んだよ。小学生なら十分子供だろ」

「カイももっと子供らしさを満喫しなきゃ損ネ」

「レイも一緒に歌おうぜ?」

「いや、俺その歌知らないし」

タカオの誘いをレイは手を振って遠慮した。

「えーっ『たき火』を知らないのかよレイ?秋の定番だぜ?学校でやらなかったのかよ?」

「それは当然でしょう。『たき火』は日本の童謡なんですから」

おとなしくしていたキョウジュも、つい口を出した。

「あ、そっか。レイって中国人なんだよな。忘れてたぜ」

「お前の頭は年中花畑なようだな」

「カイ、今のはさすがに嫌味だって分かるぜ」

「でもタカオの気持ちも分かるネ。それだけレイが日本に溶け込んでいるってことネ」

「ところでその歌の“かきね”ってのは何だ?」

「かきねって呪文だろ?」

「What?!“かきね”って言ったら柿の木の根っこの意味ネ」

「ふ、二人とも違います!間違ったことを教えないでください。“かきね”とは竹や木等で作った敷地を仕切るための垣のことです!」

「「垣?」」

タカオとマックスは目を点にして、頭の横で両手を広げた。
全く理解していないことにキョウジュは苦笑いをした。

「馬鹿め……」

カイも密かにため息をこぼす。

「ほら、見てくださいあの公園を。背の低い植木が囲いになっているでしょう?あれが垣根です」

キョウジュがずっと前の方にある公園を指した。
ツツジの木らしき高さの低い植木で公園の敷地が仕切られていた。

「へえあれ垣根ってんのか」

「タカオ……5年生にもなってそれはいかがなものかと」

初めて聞いた言葉だとばかりに新鮮な顔をする友に、キョウジュは落胆の息をつかずにはいられなかった。


end
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