03/14の日記

15:00
ほわいと らぶ(ホワイトデー小話)
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拍手パチパチありがとうございます。
お礼の意味も込めて、ホワイトデーの小話です。

『ほわいと らぶ』

「あー。蛮ちゃん。今日は雨だよ」
動物のように四つ足で窓に這い寄ると、銀次はまだ布団に潜ったままの蛮に声をかけた。
「マジか? あー。ビラ配りはナシだな」
布団から手だけを付きだして、蛮は枕元を漁る。
程なくして煙草を掴むと、今度は首から上を出して煙草に火を点けた。
「蛮ちゃん。また、布団に焦げ跡作んなんでよ」
再び布団に潜り込んできた銀次が唇を尖らせた。
「あーはいはい」守る気のないような返事が返ってくる。
そんな蛮に小さく溜息を吐きながら、銀次はふと思い出した様に言い出した。
「そう言えばさ、変な夢みたいんだよね。俺と蛮ちゃんが、普通の高校生でね。学校に通ってんの。士度やカヅっちゃんもいたなぁ。鏡やジャッカルは先生やってんだよ」
夢の場景を思い出したのか、銀次はクスクス笑い出す。
「…んだよ、お前。そういう方が良かったのか?」
「そういう方?」
一瞬、意味がわからなくて銀次が聞き返した。
「そうだな……。もし、今の人生がリセット出来て、真っ白な状態になれたとしたら、お前は普通に高校生活を送れるような人生にしたいかって事だよ」
「真っ白にリセット……?」
銀次は呟き、同時に想像してみた。
夢で見ていたような人生を送りたいか、とーーー。
「ねぇ。その新しい人生に蛮ちゃんはいるの?」
「さぁな。いるかもしれねぇし、いねぇかもしれねぇな」
「だったら、別にいいや」
銀次はあっさりと言った。
「俺が興味あるのは、普通の人生を送る事じゃないもん。蛮ちゃんのいる人生だから。蛮ちゃんがいるなら、普通じゃない今の人生も悪くないよ」
好奇心旺盛の銀次の事、普通の人生も送ってみたいと、そんな回答を想像していただけに、蛮は思わず面食らった。
「お前って、本当に臆面もなく言ってくれるよなぁ」
思わずニヤけそうになった口元を、蛮は煙草を取る仕草で誤魔化した。
空き缶に吸い殻をねじ込むと、ふと煙草の近くに何かが転がっている事に気が付いた。
モノクロのような部屋に、一際目につく鮮やかなピンク色。
蛮は、それを摘み上げてニヤリと笑った。
「ーーー銀次」
銀次が振り返った瞬間、蛮の唇が覆い被さる。
ぞわっと腰が浮き立つ様なキスに、夕べの情事が余韻が蘇りそうになる。
「んー。あっまい」
唇が離れたと途端に、銀次が叫んだ。
ころっと、口腔で飴玉が転がった。
「今日は、ホワイトデーだったろ? 俺様からのプレゼントだ」
上機嫌で微笑む蛮の、その原因が何なのか銀次はいまいちピンと来ていなかったが、本能が囁く。
「俺ばっかりじゃ悪いから、蛮ちゃんにも飴舐めさせてあげるよ」
コロコロ、コロコローーー銀次の口から蛮の口へ、そして、また蛮の口から銀次の口へ飴玉が転がっていく。
飴が小さくなった頃には、雨音に混じって、甘い甘い声が響き始めた、とかーーー。




真っ白な世界に、自由に未来を描けるなら、君がいる世界がいいな。

口の中で転がる飴のようなどびきり甘い世界にしよう。




ご拝読ありがとうございましたm(_ _)m

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