小説H

□三十万記念
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「言葉って曖昧だと思わない?風魔。」

私に覆いかぶさる赤い髪をした風の悪魔に、私は彼の頬を撫でつつにいっと笑った。
普段は深く甲冑を被って隠れている瞳も、きらりと炎の明かりに照らされて艶めかしく光る。
静かな色を含んだその視線がなんだかくすぐったくて、私は風魔の首に腕を巻きつけた。

「私は風魔が口を聞かなくたっていいよ。」
「・・・。」
「私は風魔が、私を抱き締めてくれるだけでいいよ。」
「・・・。」

風魔が、私をすきでなくても、いいよ。
これは言わなかった。これは、忍でなくなる気がしたから、口には出さなかった。
私の緋色の髪が、風魔の髪と絡んで、区別が付かなくなる。
彼と私の髪色は少し似ているから、嬉しい。
首に絡めた腕を少し強くすれば、背中にまわった風魔のたくましい筋肉質な腕も強くなったから、ふにゃり、と頬が自然と緩まった。

「ねえ風魔。」
「・・・?」
「私はね。」

あんたが私の敵だとしても、

「きっとこうして、抱き締めてもらいにくると思う。」
「・・・。」
「風魔はどうする?」

私を殺すか、それとも今のように、私を抱き締めるか。

口に出さずともつたわるだろうと、それ以上は口を一文字に結ぶ。
そうすれば、少しだけ身体を離した風魔が、少し強引に私の唇を奪った。
荒っぽく唇が割られる。
熱い熱い舌が、私の舌に絡んで脳髄を掻き混ぜられるような感覚を巻き起こした。
あふ、息を切らす。風魔は、接吻で返事をしてくれた。
心配する必要はないと、接吻で伝えてくれた。

「んっ、ふ、ふ、」
「っは、・・・」

接吻の合間に漏れる風魔の息が、耳をくすぐって、どうにかなってしまいそうだ。
腰を抱く風魔の手が、ゆるゆると背を撫で、私は風魔にすがりつく。
ねえ風魔。でもさ、心配せずにはいられないんだよ。
きっと風魔もそれを分かってる。ねえ風魔。








言葉なんて期待してない

私は言葉よりももっと深いものを期待しているよ。

――――――
私は本当に佐助好きだなとかしみじみ思った。
言葉を期待しないといえば小太郎だろうなと思って・・・( ´,_ゝ`)

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