小説G

□神威連載
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私と神威さんと阿伏兎さんは、そろって闇をかけていた。
新人でなれていないからとか言う理由で一緒に行動してくれるらしいけど、私はまあ、一緒にいてくれるだけで心細さは解消できるので結構助かっている。
時折闇夜から飛んでくる銃弾を、阿伏兎さんは弾き、神威さんは避け、私は気にすることなく受け続けている。
銃弾が貫通しなかったときは、撃たれた部分に力を入れればぷつんっと落っこちていくから気にすることもない。
撃たれたそばから回復していく私に、阿伏兎さんは「血を残して居場所がばれる心配のなくていーな。」と苦し紛れに言った。どうやら私の特異体質にまだなれていないらしい。・・・ってか、自分で特異体質とか言っちゃったし。
一方神威さんは、倒れることなく神威さんたちについて走る私を肩越しに面白そうに眺め、にまにま口元の笑みを深くしていた。こっちみんな変態!

「いつまで走るんです?」
「さあ?敵に追いつくまでかなー」
「敵はどこに?」
「俺たちの先を集団で逃げているらしいよ?車だからねー。追いつくかな?」
「車かよ!」
「えええ・・・。」

追いかけてんの車かよ!?普通に無理じゃね?!
神威さんの言葉を聴くなり、ぴたりと足を止めた阿伏兎さん。「あ、やっぱり?」なんてのんきに小首をかしげている神威さんはなんであんなに余裕なんだ。
能天気さに頭をかかる阿伏兎さんの背をとん、と叩けば、「やっと理解力のあるやつが味方にできたよ・・・」とこぼしていた。ご愁傷様です。

「で?車相手にどうやって追いつこうって言うんですか?」
「うん。これ。」
「・・・・・は?」

阿伏兎さんの問いに、笑みを曇らすことなくびしっと指差した神威さん。その先にいいるのは、何故か、私。
思わず眉間にしわを寄せ、渋い顔をして神威さんに尋ねた。

「私にどうしろと?」
「うん。ちょっとひとっ走りして車ぶっ壊してきてよ。」
「無茶言わないでください。」

さすがに車に追いつけって言うのはできないだろうと、私は迷わず首を振る。けど、私に指示する神威さんの笑顔は変わらず、無言の圧力よろしく笑顔の圧力をかけられた。

「・・・・あのですね、できなくても、文句は言わないでくださいね?」
「できるできる。」
「いや出来なかったら出来なかったときに困りますから!・・・だから、失敗したら戻ってきますから、その怒らないでくださいね?」
「出来るに決まってるけど、うん。」
「まだ言うか。」

出来る出来ないで問答を繰り返す私たちを、面倒くさそうな顔をして傍らで見守る半空気化した阿伏兎さん。
そして、ようやく私が折れ、ため息をつきながらやっぱり腑に落ちない気持ちで地面を踏みしめた。

「・・・失敗しても」
「あーわかったってば!いい加減うるさいヨ?」
「・・・もー。」

出来るわけないじゃん、とか愚痴をこぼしつつ、私は背中の蛇惹が走るときの邪魔にならないように少しずらす。
背後ではやる気なさげに「がんばれー」とか応援もどきをしている神威さんと阿伏兎さん。畜生まじめにやりやがれ。
そう怒鳴りたいのを我慢して、私は思い切り地面をけったのだった。








かくして退屈に殺されてゆくひびを選んだのは俺だった1

(私ってパシリじゃん。)

――――――
眠いなー。

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