小説G

□bsr連載41.5
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気配を感じて、私はとっさに常備しているクナイを叩き込むように投げつけていた。
が、かすかに風を切る音を捉えたかと思えば、そのくないは標的をしとめる前に消え、代わりに背後にすとんと何かが落ちる音が。
眉間にしわを寄せ、これ以上に無いくらいの嫌悪の表情を浮かべた私は、振り返るのも嫌だがゆっくりゆっくりそちらを向いた。

「よっかすが。」
「帰れ。」
「ちょっ!ちょっとそりゃないぜ!」

お前と話している時間すら惜しいと、そういってやるのも嫌なので、さっさと背中を向けて謙信様のもとへ走ろうとしたが、そいつが私の前に来て行く手を阻んだのでめいっぱい顔をしかめる。
そうすれば、目の前の佐助が引きつった笑みで「そんな顔しなくてもいいじゃないの」とつぶやいた。ふん。

「で。何のようなのだ。」
「んー?あ、そうそう、大将から上杉謙信への文を届けに、ね。」
「気安く謙信様の名を呼ぶな!!」
「うおっと!」

ちっ、外したか。人形気取りの汚らわしいやつが、謙信様の名を口にして良いわけが無い!思い切りくないを投げつければ、それもひょいとかわして木の枝に逃げた佐助。
悔しくなって、私はほえるように文を渡すよう催促した。

「さっさとしろ!」
「はいはい、わかったって。」

苦笑を浮かべる佐助から手紙を引ったくり、あとで中身を念入りに確認せねばと心に決めつつ懐に収める。
だが、役目を終えたはずの佐助がいまだ動こうとはしないので、私は怪訝な目で佐助をにらんだ。まさか、またろくでもないことをほざくんじゃないだろうな・・・。

「なあかすが。」
「・・・なんだ。」
「山賊狩りのうわさは知っているだろ?」
「・・・山賊狩り?」

こいつは何を言っているのだ。・・・山賊狩りといえば、奥州に出現した残虐な殺人女のことか?奥州筆頭伊達政宗が、こちらに文まで出してその女のことを知らせていたが、その女がどうかしたのだろうか?

「そいつはね、案外悪いやつじゃないと思う。」
「・・・お前がそんなことを言うなんて珍しいな。」
「あのね、俺様だって見境なく怪しんだりしませんって!・・・話を戻すけど、そいつ、悪いやつじゃないのはわかってる。けどね、」
「・・・・?」

佐助の口が、不意に言いにくそうに閉じる。こいつに限ってこんなことがあるとは思わなかったので、片眉を上げて佐助を見やれば、一度視線をどこかにずらして、また私のほうへ戻した。

「あいつはもしかしたら、鬼でもついているのかもしれないね。」
「はあ?鬼?」
「信じてないでしょ。」
「当たり前だろう。」

こいつ、何を言うかと思ったら・・・ため息をつきたくなったが、佐助の不満げな顔を見てまさか本当なのだろうかと疑う。
と、私がため息をつく前にため息をついた佐助が、ぼりぼりと頭をかきながらひょいと別の枝に移った。

「それじゃ、そういうわけだから!」
「は?!」
「謙信様によろしく頼むよー?」
「っ気安く謙信様の名を・・・!」
「じゃーなー!」

私を見下ろして笑み、そのあと姿を消した佐助。ちっ、と舌打ちをして、私は早速謙信様の元へ急いだ。
佐助の言っていた女の話は何なのだろうか。独眼流伊達政宗さえも動かす女の正体は何なのだろうか。

・・・これは、また独眼流の手紙を読み直す必要がありそうだ。








あの子には気をつけろ

(・・・ふえっぐぢ!)
(汚いくしゃみだな。)
(うっせ。)
(風邪でも引いたの?)
(どうなんだろう・・・多分違うと思うけど。)

―――――――――
佐助とかすがの話書くの難しい。

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