小説J

□幸村成り代わり
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どもー!武田軍真田源次郎幸村が僕、真田忍隊の長、猿飛佐助だよ!
昨日から、あの独眼竜、伊達政宗のよくわからない意図に振り回されて、奥州にきてるよ!旦那は旅行気分みたいだけど、俺様は気が重いねー・・・。
なんてったって旦那は真田家の一人娘!大事な跡取りが伊達家の当主にどうこうされちまったら・・・ははは!笑えねえ!俺様の首も危ういって!
まあ、そういうわけで大変です。

「むおおおああああ!」
「Ya-ha-!Let's party!」
「「・・・・はあ・・・」」

俺様と右目の旦那のため息が、前を馬で颯爽と駆ける二人の背中で盛大にもれる。
もちろん二人はそんなの気に・・・いや、うちの旦那は少し困ったようにこちらを向いたみたいだけど、すぐに独眼竜が旦那に気をそらされていた。
・・・・・独眼竜・・・お前・・・。

「この森を抜けると川だぜ!」
「川!?見ていこう!」
「Of course!」

おっと、どうやら川に向かうらしい。ちょっとちょっと、川遊びとかして、着物びしゃびしゃにしないでよ?
楽しそうな旦那を後ろから見て、俺様はなんだかいい気分ではない心を無理やり奥に押し込んだ。
いい気分じゃないのは嫌な予感がするから?・・・さあ。ね。


―――――

「っぶはー!」
「つめてー!」
「・・・・。」
「政宗様・・・」

餓鬼じゃあるまいし、川に飛び込むなんて事はないだろうとか思った俺様馬鹿だ。
この人たち。餓鬼だったよ。
まさに的中。言葉どおりに川に飛び込み、全身びしょびしょになった二人が、ぜいぜいと息を切らしながら川から上がってきた。
何もいえずにただ笑う俺様。頭を抱える右目の旦那。ふと、川から上がった旦那が、俺様と右目の旦那の様子に気づいて、ひくりと頬を引きつらせた。

「・・・ね、ねえ。」
「ah?」
「・・・・・あの。前。」
「前!?・・・・・・・・あ。」

独眼竜も気づいたらしい。
右目の旦那は、世界中のどんな男も竦み上がる恐ろしい顔でずかずか独眼竜に歩みよって、母親さながら説教をこかれる。
旦那はといえば、申し訳なさそうな笑みを浮かべ、小さくなりながら俺様の前に来て、小さく、「・・・怒ってる?」とたずねた。

「どうして?」
「・・・びしょびしょにしちゃったし・・・。」
「わかってるなら、なんでやったの?」
「・・・ごめんなさい。楽しくて・・・。」
「・・・・はあ。ま、反省してるみたいだし。許してあげるよ。」
「・・・!」

俺様がそういうと、旦那はぱっと嬉しそうに笑った。
単純な旦那に、俺様は思わずふっと頬を緩める。
佐助だいすき!ありがとう!と、そういう旦那にハイハイと適当に返事をすれば、旦那はびしゃびしゃの格好のまま俺様に抱きついてきた。
うわつめたっ!って文句を言うけど、旦那はきゃらきゃら笑うばっかりで離れようとしない。
まあ、俺様も、離れろ、なんていわないけど。

いつの間にか、嫌な気分もすっかり消えて、なんで嫌な気分だったのかもよくわからなかった。
それと、右目の旦那に怒られて、しゅんとなっている独眼竜を見て笑う旦那を見て、少しだけ優越感に浸ったので、・・・まさか俺、嫉妬、とか・・・。

まっさかね。








只今嫉妬中

(なんつって。言い訳するほど落ちぶれちゃいねーけどねっ)

―――――
奥州二日目。
案内してもらったけど説教されて終わりました。

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