小説J

□コラボ小説
1ページ/1ページ

「政宗様ッ、お引きください!」

目の前には万を超えた軍勢。戦わずして負けを認めるのは武士の恥。けれど、これには、恐怖すら抱いた。
死への恐怖ではない。あのお方の背を守り通すという、自分の役目にだ。

あのお方の背中を守り通すことができるだろうか。あのお方に勝利を、天下への道を、ささげることができるのだろうか。
ぶるりと刀を握る両腕が震え、なんとまあ意気地のないものかと自分を叱咤した。

「ここは、お引きくださいませ!政宗様!」
「ッBut、小十郎!」
「お引きくださいッ!」

もう一度。いや、何度も、俺はあのお方に強く言った。
天下を手にするという事実は常にあなたの傍らにある。何も急ぐ必要はない。何も、無茶をする必要はない。
強くなるためにあせる必要はない。貴方はもっと強くなる。
万物さえも、それを認める。この俺が、証明する。
だから。

「貴方の背中には、すべてがかかっておられるのです!」

生きてください。





―――――――




伊達軍は二分に分割され、俺は政宗様のおとりとなり、敵をひきつけた。
政宗様が無事城にお戻りになられたと、その知らせが来た頃には敵との決着もつき。
われながら、よく死ななかったと思う。そして、よくついていたと思う。
運命の神とやらが、きっと、俺を生かしてくれたのだ。政宗様が天下をおとりになられるその姿を俺に見せるために、生かしてくれたのだろう。
思わず全身の力が抜けた。刀を支えに、地に崩れ落ちる。
情報を伝達してくれた忍びが一瞬、あわてて俺を支えようと手を伸ばしたが、俺はそれを制して、俺より先に兵たちを城に戻してやってくれといった。

「しかし、片倉様・・・」
「俺もすぐに向かう。少し休んだらすぐに追いつく。なに、心配されるほど傷を負っちゃいねえ。」
「・・・・承知。」

ただの、強がりだと、忍びにはばれただろう。
だが、必ず政宗様の元に帰る。ただ少し疲れただけだ。

ぞろぞろと城へ引きかえっていく、ともに戦ってくれた兵たちを見送り、生き残りがいないかどうかをしばらく確認してから、自分も馬にまたがった。
普段ならなんでもない馬が走る振動が、ひどく重く、苦しいものに感じて、なぜだか息も切れて。

気づいたときには、俺は地面に落ちていた。

「・・・あァ。」

いつの間にか、道を大きく反れ、森に入っていたらしい。
豊かに茂った木の葉の間から、まばゆいばかりに輝く星と月。闇色の空が優しく俺を見下ろしていた。
こんなところで寝て入られない。
馬はそんなに離れていないところで休んでいるようだ。
俺は、ずり、と体を這い蹲らせて、腹ばいに馬に近づいた。
このままでは馬にけられてしまうかもしれない。早く起き上がらねば。そうは思っても、足に力が入らなかった。腕に力が入らなかった。頭が、回らなかった。

視界も。


暗転。
俺はまたしても、地面に伏せった。
やわらかい草が体を包む。少しくらい眠っても、死にはしないし風邪も引かないだろう。少し休むくらいなら。少し、すこし。

重くなる瞼。ゆっくり、閉じていく瞳。
視界の端に、柔らかな炎の光が見えた気がした。
気、だけかもしれなかった。
もしかしたら、獣の瞳か。

それでも、よかった。
どうでも、よかった。










思いつく限りの奇跡をきみに

(神は、優しい彼に奇跡を授けた。)

――――――――
はじまったお( ^ω^ )
がんばろうね蝋野!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ