小説J

□七夕企画
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ふと、閉じていた目を開いて、私は体を起こした。
筋肉質で、暖かなザンザスの腕が私を抱きしめていたけど、しっかり眠っているようで、その腕も簡単にぽたりとシーツの上に落ちる。
その衝撃でおきてしまうことのないよう、私はそっとその腕をシーツの上において、体を起こした。
ゆらり。自分の黒い髪が肩から落ちて、顔の横にカーテンのように垂れた。
眉間に若干よった皺に、ふっと思わず笑ってしまう。
枕からすこし離れたところには、マジックミラーの窓。そしてその窓の奥には、あふれんばかりに瞬く星たちが広がっていた。

今日は暦の上では七夕という日付だった。
イタリアと日本はやはり違うのだろうか。日本で見られるような行事を行っている様子はないし、星を見るという人もあまり見られない。
確かにイタリア人は日本人と比べてロマンチストでムードを大切にするけれど、行事に関することには日本のほうが豊からしい。
なんだか得意な気分になって、私は小さく頬を緩ませた。

七夕。織姫と彦星という男性と女性が、年に一度限り。今日だけ、ともにあることを許される日だった。

小さな頃は、特に意味もなく、特に何に感動することもなく、へーそうなんだ程度に納得していた。
けれど、今少し大人になって、恋というものを経験してから言わせてもらうと、
なかなか織姫と彦星はすごかったのかもしれない。いや、すごい。
一年に一度しか会えない女よりも、周りにいるであろうグラマスで性格のいい美女と遊んだほうが楽しいに決まっている。
自分など忘れて、もしかしたら彼は楽しんでいるのかもしれない。
なんて。
私なら絶対に考える。
もしそうでなくても、一年も会えずにただ過ごすなんて、気が狂ってしまいそうになる。
一年もあえないのに、ずっと、彼を好きでいられるかどうかとか、抱いてはいけない不安までも抱いてしまいそうになる。
それを乗り切って、彼女らは今日も、一年ぶりの再会を果たしているのだろう。

素直にすごいと思った。

一年の時をはさんでも、変わらぬ愛を、いや、より強く燃え上がった愛を胸にともし続ける2人はすごい。
愛が強いということなのだろう。
女として、正直にあこがれた。

けど、

「ん・・・・。」
「!」

起こしてしまっただろうか。身じろぎしたザンザスの二の腕に手を置き、顔を覗き込むけれど、起き上がる気配はない。
そろそろ寝るか。と、私はまた毛布をかぶった。

けど、
一年も会えないのなら、強い愛といわれなくてもいい。ずっと自分に縫い付けてしまえるように、私は一分も惜しいとばかりにそばでくっついていたい。
不安になる要素をすべて取り払って、自分だけを愛してほしい。自分だけを見てほしい。

そんな風に、独占欲を丸出しにする自分に、
私は勝手に「まだ餓鬼んちょな証拠だな」とつぶやいた。








私だったら 耐えられない
(彼は私のものだもの)

―――――――
独占欲撒き散らしただけっていうね!
えええなんかみじけええ

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