Trip×とりっぷ×トリップ!

□第4話
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リーンゴーン

「はーいッス!」
「よっ!」
「おはようアッシュ」
「おはようッスMZD、音々。…美琴ー!音々達が来たッスよー!!」
「おはよう音々、さっき頼んだ物どうなったかしら?」
「おい、俺様は無視かよ」
「あら、バ神もいたの?おはよう」
「お前どれだけ根に持つ気だよ…」
「あはははは…うん、何とか完成したよ。時間無かったからやっつけ仕事で悪いけどこんな感じかな」

差し出した紙袋の中身を美琴が取り出す。そこに入っていたのは僕が急いで作ったリボンもレースもフリルも何もないシンプルな無地のワンピースだ。

「ありがとう、充分よ。今日の買い物だけで使うには勿体ない出来だわ」
「ねぇ美琴…ユーリはこの事知ってるの?」
知ってる訳無いじゃない。言ったら即反対されるのがオチよ」

だろうね。

「あのー…その服は何ッスか?」
「ユーリが私達と一緒に歩いても大騒ぎにならない方法よ」
「…まさか」
「そのまさかだと思うよアッシュ…」

僕も最初思い付いた時にそれは無いと思いたかったんだけど…現実って時に残酷だ。

「スマイルが面白がりそうなネタッスね…ここにスマイルがいなくて良かったッス」
実は透明になって音々の後ろにいたりしテ
うわっ!スマイル!?
「おはヨー、音々。ヒッヒッヒ、コレは確かに楽しそうだネ。カメラ用意しとこうかナ?」
そんな事したら確実にユーリの心に傷を残すッスね
「じゃあちょっとユーリの所に行ってくるわ」
「行ってらっしゃーイ♪」





目を開ければ天井と畳の匂い。
Des-ROW・組の皆が同居しているのはとっても大きな日本家屋だった。何でも六さん所有の家らしい。
しかしDTOやミサキなどの現代人組が「ソファー置きたい」などと言い出し、少しばかりリフォームして一部がリビングなどの洋装になっている。私の家も洋装メインだったのでこれはちょっとありがたかった。
畳も好きなんだけどね、い草の匂いとかさ。でもやっぱり慣れてる方が生活しやすいし。

「優歌ちゃーん!朝食できたから降りてらっしゃいなー!」
「はーい!」

トタトタトタ…

下に降りればこれまた純和風な家には不釣り合いな洋風のダイニングにDes-ROW・組のメンバーが勢揃い。

「おはよーございまーす!」
「おはよー優歌ちゃん。朝から元気だねー!」
「おはようタローちゃん!朝から可愛いね!!」
「えー?俺男だよー?『可愛い』よりも『格好良い』の方が良いなー」
「どっちでも良いじゃん、誉めてるんだし」
「それもそっか」
「「あははははは!!」」
「よお修。朝から元気だなアイツら…」
「おっす六。…むしろテンション異様なまでに高くて若干引きそうなんだが俺…」
「良いですね、若いって…」
ハヤトお前それ中学生が言う台詞じゃねぇぞ
「今日はMZDと買い物に行くんでしょう?」
「はい!もう今から何買おうか迷っちゃって…」
「今度私とも買い物に行きましょうね。可愛い洋服いっぱい選んであげるわ♪」
「うわぁ、楽しみです!」

席に着くとミサキさんが料理の乗ったお皿を私の前に置きながら話し掛けてきてくれた。
やっぱ現役モデルさんだよね…食器持つ姿も様になってるや。
私もこれ位身長欲しい…

「荷物持ちとか必要じゃない?僕も一緒に行こうか?」

ふふん、やっぱりそうきたわね。
一昨日までのアタシなら即OKしていた事だろう。
だけど昨日、音々の手を握ったあの瞬間からカジカはアタシと美琴の間で「音々に近付く猛獣」として認定されたので予め一緒に行く人は昨日の内に決めておいたのだ。

「残念でしたー、昨日リュータにお願いしちゃったもんね。ね、リュータ?」
「あ、ああ…。あれはお願いじゃなくて脅迫の間違いだろ…(ボソッ)」
「何か言った?」
「何でもアリマセン」
「ごめんねカジカ、折角一緒に行こうかって言ってくれたのに」
「気にしないで良いよ、音々ちゃんによろしく言っておいてね」
「覚えてたらね?」
「「あははははは(おほほほほほ)」」

一触即発の空気が流れたその時だ。

ピッチピチピチピチ丼屋ー♪早くて安くてその上美味いっ♪ピッチピチピチ…

ズルッ

「…何?この雰囲気ぶち壊しーな着うたは」
「…ピチ丼屋のCMソングですよ。リュータ先輩がバイト先から電話がかかって来た時の着信音にしてるんです」

あるんだCM。
そしてリュータが携帯に出る。

「はい、リュータですけど…え?マジっすか?!はい…はい…ええ、分かりました、昼過ぎっすね。じゃあまた後で」

ピッ

「どうしたのリュータ?」
「…悪ぃ優歌。今日午後からシフト入ってた奴が急に体調崩してバイト来られなくなったからヘルプ来てくれって頼まれた…」
「そうなんだ…ま、しょーがないよ。日曜なんて稼ぎ時だから人手もいるだろうしね」

って事は他のメンバーにお願いしなきゃいけないんだよね…カジカ除く。

「他の皆は?」
「学校の友達と出掛ける約束が…」
「俺もサーファー仲間と海に行く約束しちゃった…」
「俺と六、ソロの収録」
「先週やった小テストの採点やんねーとな…」
「私もモデルの方の仕事が…本当にごめんなさいね、優歌ちゃん」
「いいえ、気にしないで下さい」

とは言え、このままだとカジカを連れて行く事に…そんな事になったらアタシ達の大事な大事な音々が危ない。
最後の望みを賭けさっきから会話にすら加わろうとしないDさんに聞いてみる。

「あの…Dさん?失礼ですが本日のご予定は?」
「…ねーけど」
「あ、じゃあ一緒に買い物「行かねーぞ」…即答ですか?!」
「女の買い物なんか長ったらしくて付き合ってられるか。俺は行かねーからな…!?」
「お願いです…Dさんだけが頼りなんです…!」

これぞ秘技・泣き落とし。
悔しいがアタシは身長が低いので大体の男相手には上目遣いになる。
正直な話、勘違いする馬鹿もいるので余り使いたくない手ではあるのだが今回はしょうがない。
学校の行事で準備を手伝わない男子に最後の手段で使っていたのだがまさかこんな形で役に立とうとは…

「ぐっ…わ、分かったよ。行けば良いんだろ、行けば」
「うわーいっ!ありがとうございまーす!!」
「な!?だ、抱き付くな阿呆ーっ!!」

おっといけない。
つい音々を魔の手から守れた嬉しさの余り暴走してしまったよ。

「あのDが折れた…」
「優歌ちゃん女優だねー」
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