RKRN×携帯獣

□挑戦の押し売りお断り!!
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「ではこうしましょう花房さん」
「あ?」
「戸部先生と勝負する前に私と勝負して下さい。私に勝てたら戸部先生と勝負でも何でもなさって頂いて結構です」
「お前とぉ〜?」

不躾にジロジロと私を見てくる牧之介に一年は組のよい子達が「失礼だぞ牧之介ー!」と野次を飛ばすのを見て心の中でこっそり感謝した。後で昼食のおかずを一品増やしてあげよう。

「あら、まさかこんな小娘に負けるのが怖いんですか?」
「よ、よーしいいだろう。女子供に手を上げたくはないがここで退いたとあっては天下の剣豪花房牧之介の名が廃る!その勝負受けて立ってやろう!泣いて謝っても知らないからな!!」
「嘘付けー!前にチャミダレアミタケ城での武術大会でおじいちゃん剣士ボコボコにした弱者への思いやり精神ゼロ人間の癖にー!」
「お前こそアヤノさんにボコボコにされて泣いて謝っても知らないぞー!」
「「そうだそうだー!!」」
「黙れー!!」

敬老精神も皆無と来たかこの男。
しかしまあ、こんな単純な挑発にあっさり乗ってくれるとは…

「…追い出すのに大した労力使わないで済むからありがたいっちゃありがたいか」
「うわー、素敵な笑顔」
「とりあえずアヤノさん、本音が思い切り声に出てます。いくら牧之介がヘッポコ剣豪でも自分の悪口には敏感だと思いますよ?」
「庄左ヱ門くんったら冷静ね!」

よい子達と会話しつつこれから出そうとしている子のモンスターボールを牧之介の視界には入らない所に移動させてこっそり開閉スイッチを押す。
ポケモンについては外国の動物とか言って誤魔化せるとは思うが流石にボールから出てくる瞬間を見られたらまずいと判断したからだ。
ボールの中にいた子は私の意図を察して外に出た後、一度近くの茂みに隠れてくれた。そして私はあたかもその子を遠くから呼び寄せるかの様に指笛を吹いて名を呼んだ。

「いらっしゃい、コハル!」
「フィアッ!」

茂みから勢い良く飛び出して来たのはリーフィアのコハル。彼女はやる気満々と言った感じで今にも私の指示を待たずに牧之介へ突っ込んで行きそうな勢いだ。

「な、何だそいつは!動物じゃなくて自分の力で戦え!!」
「ああ、言い忘れてました。私動物使いで自分自身は全く戦えないのですよ。なので私の代理としてこの子が戦います」
「くそう、どこまでもこの天下の剣豪花房牧之介をこけにして…許さん!」
「こけにしたつもりは無いのですが」
「やかましい!行くぞ、覚悟ー!!」

鞘から剣を抜いてこちらに駆けてくる牧之介を一瞥して溜め息を吐くコハル。
そうだね、さっさと終わらせて食堂のおばちゃんを手伝いに行こう。

「コハル、あの人に“リーフブレード”」

シュバッ!!

素早さに特化した“せっかち”な性格のコハルが駆け抜け牧之介と交差する。その若草色の体には傷一つ付いていない。
対する牧之介はと言うと…

「はーっはっはっはっ!何だお前、大きな口を叩いた割にはよわ…?!」

笑っていた牧之介の顔色が見る見るうちに悪くなっていく。その視線の先では彼の前髪がハラハラと風に舞って地面へと落下していた。

「大きな口を叩いた割にはよわ…?すみません、続きがよく聞こえなかったのですが何て仰ろうとしたんですか?ちなみに返答次第では前髪に続いてその髷を散髪しますよ」
「…き…」
「き?」
「今日の所はこれ位で勘弁してやる!また会おう、我が永遠のライバル戸部新佐ヱ門!!」
「もう来るなー!!」

金吾くんの怒号を背に受けて学園の外へと駆け出す牧之介。
うーん…あの人確かに逃げ足だけは天下一品かもしれない…

「アヤノさんすごーい!」
「ゆらり…れ、礼を言うぞアヤノ…本当に助かった…」
「いいですってお礼なんて。どうせならコハルに言ってあげて下さい」
「そうか…助かったぞコハル…」
「コハルちゃん偉い!」
「フィー!」

お礼を言われたり褒められたりして得意気に胸を張るコハル。
その様子に皆で笑った後、一緒に食堂へと歩いて行った。





挑戦の押し売りお断り!!
でもあの人また来そうだなあ

(すみませんおばちゃん!遅くなりました!!)
(あらアヤノちゃん珍しいわね、何かあったの?)
(えーっと…花房牧之介とか言う人がさっき来てそれを追い返してたら…)
(ああ、牧之介ならしょうがないわね。怪我は無い?女の子なんだから無理しちゃ駄目よ)
(は、はい。大丈夫です(牧之介ならしょうがないって…普段からどんだけこの学園に迷惑掛けてるのよ))





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