白雪姫+αと宇宙から来た巨人達

□第8話
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…ってな訳で一番、天野星羅!いっきまーす!!
「オプティマスこいつ本気です!目が据わってます!!
オートボット!総力を以て彼女を止めるんだ!!

あーあ、星羅様ったら…眼鏡の登録取り消ししないで行っちゃった。
しょうがない、私一人でやっておきますか。
パスワードでログインして…うん、これで良し。後は星羅様が戻って来るのを待つだけ。
でも起動したままだとバッテリーの無駄遣いだからシャットダウンしておこうかな。

「バンブルビー、私は少し休みます。星羅様が戻って来たら電源を入れて下さい」

バンブルビーがコクリと頷いたのを確認してから私は自らのシステムをシャットダウンした。
え?何でバンブルビーを呼び捨てにしてるか?つか普段と口調が違い過ぎないかって??
…だって私こっちが素だし。勿論こんな性格にプログラムしたのは星羅様よ。

「秘書役は欲しいけど堅苦しいのは嫌」

って言ってね。
自宅にいる時とかは結構タメ口なの。他の場所は駄目、どこから誰が見てるか分からないし…あ、そうそう呼び捨ての理由よね。
私が最初「バンブルビーさん」って呼んだらラジオからブーイングが流れて…それで星羅様が「さん付けは嫌?」って訊いたら今度は歓声が返って来たの。
他のオートボットの皆も同じ事を言ってきて…だからオートボットの皆は呼び捨てなんだ。
それにしても星羅様を待ってる間暇だなー、何か未処理のデータでも片付けようかな?
そう思った時だ。

「よぉ、サクラ」
「…どちら様ですか?」

変な奴が私のシステムに侵入して来た。システム内部に声だけが聞こえてくる。

「随分なご挨拶だな、ついこの間俺にウイルスのプレゼント寄越したばかりだろー?」

ウイルス?私が最近ウイルス送ったのってペンタゴン…
そこでふと、先程オプティマスが星羅様のハッキングが得意なディセプティコンはいるかと言う質問に答えた時の言葉が浮かんだ。

「前者は判断が付かないが…後者は間違い無くフレンジーの仕業だろうな」

まさか、でもそれしか無い。

「あなた…ディセプティコンのフレンジーね?」
「ご名答。ついでに言うと今さっきお前の主人がお前使ってかっ飛ばしたロボットの頭も俺なんだぜ?」
「あらそう。それで?その野球のボールみたいに飛んで行ったロボットが私に何の用なの??」
「単刀直入に言う。お前、俺達の仲間にならないか?」
「…は?」

何を言っているのこいつ。仲間?私が?ディセプティコンの??

「お前、俺と渡り合える技術持ってるのに幾ら製作者だからってあんな虫ケラに従ってるのは勿体無いぜ?俺達と組めばもっと思う存分その技術を活かせる筈だ」
「私があの時あなたに送ったウイルスは全て星羅様が作った物。私の力じゃないわ」
「その星羅とか言うお前の製作者も直に他の人間…いや、炭素系生物全て同様俺達が滅ぼす。この星の機械は全て俺達と同じ生命体になる。お前だけそうなるタイミングが少し早くなるだけだぞ?」
「いいえ、星羅様も他の人も死なない。オートボットの皆がいるもの」
「…どうあっても俺達の仲間にはならないと?」

彼は声だけだから表情は分からない。
だけど、真剣な声音に私も真剣に答える。

「…ええ、あなた達にとってオールスパークが大切である様に私にとって星羅様はとても大切な存在なの」

製作者だからとかそんなの関係無い。
初めて私が正常に起動した日、見せてくれた心底嬉しそうな笑顔。
あの笑顔を見た時から私は星羅様に仕えようと決めたんだから。

「そっか…残念だよ。





本当に、心の底からな」
!!??

どことなく寂しげにフレンジーがそう呟いた次の瞬間、私は正常に動作出来なくなった。

「何を…した…の…!?」
「俺が軍事ネットワークにハッキングした時ウイルス同時に送り込んでたの覚えてるか?お前らはサーバーを隔離した事で防げたと思っただろうが…大きな間違いだ。今頃は政府系ネットワークを通してこの惑星の各地であらゆる通信がダウンしてる。勿論お前も…仲間になるって言えばワクチンプログラムを送信してやったのに」
「な…!」
「また後で会おうぜ。…『浄化作業』が終わって虫ケラのいなくなった地球でな」

その言葉を最後に通信が遮断された。
それと同時に今までに無い物が感情表現用のプログラムに発生する。
何だろう、これは。どれだけ人間に近く創られても所詮私は只の通信端末である筈なのに酷く腹立たしくて…泣ける物なら泣きたくて…
…ああ、分かった。

これは『悔しい』だ。

彼が侵入したのに気付けなかった事が悔しい。
ウイルス一つで機能停止してしまう事が悔しい。
そして何より私を創ってくれたあの人を守れない事が悔しい。
消えゆく意識の中で私は生まれて初めて祈った。
神様、もし本当にいるならば私の願いを叶えて下さい…

体が欲しい、宇宙から来た彼らの様に自らの意志で動かせて大好きな彼女を守る事が出来る鋼の体が。




 

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