白雪姫+αと宇宙から来た巨人達

□What's the thing to control space?
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自分達は金属『生命体』と名乗っていてもこの星に住む殆どの生命体の様に睡眠を必要としている訳ではない。
だから人間達の寝静まる真夜中は数少ない自分達が本来の姿であっても自由に外を出歩ける時間となっている。
今日も例に漏れず最近よく行く場所…星空がよく見える施設の屋上へと足を運ぶと

「あら、メガトロンじゃない」
「星羅…何故こんな時間に起きている」
「んー?ちょっと眠れなくてさ、夜のお散歩」

明日は仕事も学校も休みだー!自由じゃー!!」と叫びながら殴り込みの如き勢いと共に泊まり掛けで遊びに来た少女が座っていた。

「そういうメガトロンは?オプティマスみたいに宇宙にいる仲間へメッセージ送る訳じゃないでしょ??」
「…俺様も散歩だ」
「あ、そ」

素っ気ない返事をして再び夜空に視線を向ける星羅の横顔は月明かりに照らされ、元々整っている容姿も手伝って幻想的で美しい…と思った所で思考を中断した。
有機体が美しいなどと…そんな事、少し前なら下らないと嘲笑っていたのに。

「サクラはどうした、いつも貴様に引っ付いているだろう」
「他の皆と完徹ゲーム大会よ。さっきは確か大乱闘スマ●シュブ●ザーズでサ●ス使ってたわね」
「混ざらないのか?」
「仕事の時以外位は液晶画面じゃない物を眺めたいの」
「…そうか」
「「……………」」

会話が続かない。普段こいつと二人だけになるなんて事ないからな…って待て。何故こいつと会話を続ける必要がある?
自問自答するが分からない。

「メガトロンはさぁ…」
「…?」
「誰かを好きになった事…愛した事とかって…ある…?」
「…何だいきなり」
「んー…何となく…思ったから…訊いてみただけ…」

ようやく眠くなってきたのか、ややトロンとした目つきと途切れ途切れな話し方でこちらを見つめながらゆらゆら小さく前後左右に揺れる星羅に「コンクリートで頭を打つと危ないからこっちに来い」と手に乗せてやる。
まただ。
何故俺様はこんな小さい生命体を気遣う?

理由が分からずスパーク全体がざわめく様な苛立ちを感じるが手に乗せた星羅から

「…ありがとぉ♪」

と言う舌足らずな謝辞と共に向けられたふわりとした笑みを見た途端にざわめきが引いて行く。
苛立つのが馬鹿馬鹿しく思えて、そんな事を考えるよりもっとこの笑みを見ていたいなんて以前の自分だったらまず有り得ない様な事を考えた。

「ねぇ…さっきの答えは…?」
「…無い」
「何で?」
「他人の事を気にしていたらその隙を突かれて俺様の地位を狙う愚か者にスパークを消されかねん。だから誰かを想うなんて事は今まで無かったし当然これからも必要無い」

俺様が言い切ると星羅は一瞬悲しそうな表情を浮かる。だが、その後すぐに笑顔に変わり

「でもさ…そんな事するのスタースクリーム位じゃないかな?貴方はスタースクリームよりも強いんでしょう??」
「当然だ、あんな奴に後れを取る俺様ではない」
「なら貴方が誰かを好きになったって問題無い。…そうだ、こんな歌があるんだよ?」

そう言って俺様の手の上に乗ったまま、まるで幼子に子守歌を聞かせる様に優しく小さな声で歌い出した。
歌の内容は如何にも女が好みそうな甘ったるい恋の歌。
だが…不思議と嫌悪感は感じず、むしろ心地よかった。それは歌が良いのか…歌を歌っているのが星羅だからなのか。

「愛の支配は地球も味方する〜♪



…ね、愛って凄いでしょ?誰にも反対されずに地球を支配出来るんだもん。人間で地球なんだから…きっと貴方達なら宇宙も支配出来ちゃうんじゃない?」
「…………………」
「最初は部下に優しくするとかさ、そういうので良いんだ。少しずつ…誰かを大事に思うって事…愛するって事がとても素敵な事だって…知って欲しいなぁ…。だって…折角…皆…争わなくても…良くなったん…だか…ら…」

そこまで言うと満足したのか、それとも眠気の限界が訪れたのか…星羅はパタリと倒れスースーと寝息を立てて眠ってしまった。

「…全く、勝手に語るだけ語ったら爆睡か…」

呆れながらも壊れ物を扱うかの様にもう片方の手で星羅の頭を撫でれば「うにゅ…」と間の抜けた声が漏れる。
しかし、こいつの甘ったるい歌のお陰で分かった事がある。

それは自分がこの少女に抱いている気持ちの正体。
歌を聴いていた時、歌詞の部分部分がパズルのピースの様に先程から分からないでいたこいつを気にする理由に当てはまって行くのを感じた。
おそらく市街地での戦闘の時、俺様を恐れる事無く真っ向から見据える勇ましい姿を見た時から。

「まずは部下に優しく…か、無理な相談だ」

そんな俺様の性格とかけ離れた行動が出来る訳無い。
それに…

「たった今、俺様は貴様が言う所の『誰かを愛する事』を知ったからな」

この事を目覚めた貴様に言ったら…そしてその感情の対象が貴様だと言ったら一体どんな反応をするだろうか?
まあどんな反応をするにしろ、逃がす気は更々無いがな。
その時が来るのを楽しみに手の中で眠る星羅を起こさない様、俺様はダムの内部へと戻った。




 

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