白雪姫+αと宇宙から来た巨人達

□結論:こいつら只のバカップルです
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虫けら共のジンクスに『色恋は先に惚れた方が負け』と言う奴があるらしい。
初め聞いた時は「馬鹿馬鹿しい」と鼻で笑ったが…訂正しよう。
何故なら俺の相棒が二年前の戦いでハッキングを阻止されて以来、とある女に惚れ込み負けまくっているからだ。
…立場でも、物理的な攻撃でも…な。(D軍所属・Bさん談)





「サクラー!一万年と二千年前から愛して「あんたと私が出会ったのは二年前でしょーがっ!!」るぅぅぅっ!?」
「まーたやってるよあの二人…」
「ふむ…今日も鮮やかな回し蹴りだな」
「全くだ、一度本格的に鍛えてみたい」
「ラチェット、そこ感心する所じゃねぇと思う。アイアンハイド、サクラがあれ以上強くなったらフレンジーが冗談抜きで死ぬから止めとけ」

…ってな訳である時は熱烈な口説き文句、またある時は国家機密レベルのデータが入ったUSBメモリと言った具合にありとあらゆる手段で猛アタックするフレンジーとそれらを悉くお得意の足技で蹴り飛ばす(データはしっかり削除する)サクラ。
そんな二人のやり取りは彼らの本拠地がフーバーダムからディエゴガルシアに移転してからも続き、最早NESTの名物と化していた。
どれ位名物と呼ぶに相応しいかは…

「今日は随分静かだな、サクラ来てないのか?」
「お、フレンジーの叫び声が聞こえてきたぜ」
「やっぱりコレが聞こえないと落ち着かないよなー」

…なんて会話がNESTの兵士達の間で交わされる事で察して頂きたい。





Side Girls−

「…しかし、何だってフレンジーはあんなにめげないのかしらね?」

ポツリと呟いたのは昔フレンジーと共にサウンドウェーブの下で諜報活動をしていた為、彼との付き合いがそれなりに長いと言うアリス。
そしてその一言をきっかけに、アーシー達三姉妹からも疑問の声が挙がってきた。

「そう言われればそうよねぇ」
「普通二年も同じ目に遭ってたら諦めると思うんだけど」
「サクラも嫌いなら嫌いって言わなきゃ、あの手の奴ははっきりさせないとしつこいわよ?」

最後にフレアラップがそう言うとサクラは不思議そうに首を傾げながら答えた。

「あら、私いつフレンジーの事が嫌いだなんて言いましたか?」
「…え?」
「むしろ…まあ、その…す…す…好きなんですけ「「えぇーっ?!」」そ、そんなに驚く事無いじゃないですか!!」
「だってアンタそんな素振りこれっぽっちも無かったじゃない!」

アリスの言葉に三姉妹も激しく頷いて同意する。それ程までに普段のサクラのフレンジーに対する態度は好きな相手にするそれではなかった。
しかし頬を赤らめ、消え入りそうな小さい声で『好き』だと言ったサクラの表情がまさしく恋する乙女なのもまた事実な訳で…

「じ、じゃあ百歩譲ってサクラが本当にフレンジーの事を好きだとするわよ?どうして『好き』だって相手から言われてるのにあんな蹴りだの何だの凄い仕打ちになるの??」
「だって…恥ずかしいんですもの!そりゃあ確かに私の気を引こうとして頑張るフレンジーは見ていて可愛いですよ?思わず『私も愛してる!』って返したくなりますよ?!だけど皆がいる前であんな大声で叫ばれると愛しさよりも羞恥心が勝ると言うかつい足が出ると言うか…。あ、でもたまに二人きりの時で言われたらちゃんと『私も』って言いますよ?それでですね…」

アーシーの質問に何かのスイッチが入ったのか、もしくは今までこういったガールズトークの経験が無かった故の反動か…サクラの口から飛び出して来るのは惚気と言っても全く差し支えない言い訳の数々だった。





Side Boys−

「アンタさぁ…本当あのじゃじゃ馬の何処がそんなに良い訳?」

そう問うウィーリーの視線の先にはラチェット不在の為、助手であるジョルトのリペアを受けているフレンジーの姿。
無論、加害者は件のじゃじゃ馬ことサクラである。

「うっせー、人間の小娘に絆されてオートボットに鞍替えしたお前だけには言われたくねーよ」

フレンジーが悪態を吐くと彼よりも一足早くジョルトの世話になって診察台に横たわっていたサイドスワイプが頭だけ動かし、二人の会話に乱入した。

「でも実際気にはなるよな」
「ああ、僕も興味あるね」
「ジョルトが?珍しいな、お前どっちかっつーとそっち系の話題無関心じゃん」
「サイドスワイプ…彼が何回先生と僕にリペアされてると思ってるんだい?同じやり取りを二年間ずっとしてるのに全く彼女を諦めようとしないその理由を是非とも知りたいよ」

驚くサイドスワイプに溜め息混じりで返すジョルト。しかしフレンジーはそれを聞くとアイセンサーを大きく見開きながら言った。

「は?諦めるも何もアイツもう俺の女だぜ??」

………………………………

「…可哀想に…蹴りに蹴られたショックでとうとうブレインサーキットがいかれたか…」
「なあジョルト、これラチェット呼んだ方が良いんじゃねぇ?」
「そうだね、今通信回線開くよ」
何だお前らその憐れみの籠った生暖かい視線は

つーか俺は正常だ!と騒ぐフレンジーに「「嘘吐け」」と三人同時に言い放てば更に反論が返ってくる。

「嘘じゃねーって!その証拠にお前ら、クリスマスとかバレンタインのイベントの日に俺がサクラに蹴られるの見た覚えあるか?」
「…言われてみれば…」
「…ねーな…」

むしろそう言ったイベント事の時のサクラは大人しい…と言うか、フレンジーが近くにいると嬉しそうな雰囲気さえ漂わせていた。
…って事はつまり…

「…え…ちょ、マジで…?!」
「でも、なら何故サクラはいつも貴方に蹴りを入れるんですか?」

普通恋人に愛の告白をされたら蹴りで返さないと思うんですけど、と言うジョルトの当然の疑問にフレンジーはさらりと答えた。

「ああ、アイツ元々はセキュリティのプログラムだからそっち方面に免疫ねーんだ。だから公衆の面前で告白したら恥ずかしさが限界突破してああなるんだよ」
「なら二人きりの時にでも言ってやれば?人前じゃねーなら大人しいんだろ??」
「ウィーリーお前馬っ鹿だなー。あの反応が良いんだよ、ボディ真っ赤にしてさー…可愛いんだまたこれが!」





Side Both−

つまり何か?
サクラのバイオレンスなリアクションは単なる照れ隠しでフレンジーが懲りないのはそんな彼女を見るのが楽しいからと…そう言う事なのか??
その後も別々の部屋で延々と己のパートナーについて惚気る二人にウィーリーとアリスは呆れながら通信回線を開き、衛星軌道を漂う(元)上司に短い通信を入れた。



結論:こいつら只のバカップルです
だから安心して宇宙から見守ってて下さい。







→補足と言う名の言い訳
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