Trip×とりっぷ×トリップ!

□第4話
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朝、窓から差し込む太陽の光で目が覚める。
目を開ければおとぎ話のお姫様が使ってる様な天蓋付きのベッド。
昨日の紐無しバンジーが現実であった事を思い知らされる…出来ればあんな体験夢落ちであって欲しかったのだが。
着替えも無いままこっちに来たので不本意だが昨日と同じ服でキッチンの方に歩けば良い匂いと楽しそうに料理を作るアッシュの後ろ姿があった。

「おはようアッシュ、良い天気ね」
「おはようッス美琴。随分と早起きッスね」
「実家が商売やってるから休みの日なんかは手伝いで早起きする事が多くてね、すっかり習慣付いちゃったのよ」
「そうッスか。でも早起きは良い事ッスよ。ユーリやスマイルにも見習って欲しいッス。ユーリは『吸血鬼が早起きして何になる』ってむくれるし、スマイルは『昨日真夜中までギャンブラーZ見てたからまだ眠いノー!』って言って布団から出ようともしないし…」
「へぇ、そうなの…」

…いつだったか優歌に見せてもらったホームページに彼らは神出鬼没とか書いてあったけど実はコイツら眠い時が多いから表に出るのも減らしてるんじゃないんだろうかとか余計な推測が頭をよぎる。

「まだ朝ご飯が出来るまで時間もあるし、二人を起こさなきゃいけないから庭でも散歩してみたらどうッスか?」
「あら、起こす位なら私がやるわよ?」
「駄目ッスよ!スマイルはともかく…寝起きのユーリはお腹を空かせた猛獣並みに恐ろしいッス。とても女の子の手に負える代物じゃ無いッス!!」

どんだけ危ないのよ。

「わ、分かったわ。じゃあ行くけど…無理しないでね」

アッシュの迫力に押され仕方なく外に出ればちょっとした森林公園並みの馬鹿広い庭に私達のいた世界とは少し違う種類の花が咲いている花壇。
実家が花屋をやっているせいかしら。見た事無い花だと名前とか育て方とか知りたくなるのよね。

「…後でユーリに聞いてみようかしら」

一通り庭をぐるっと回ってから城に戻り食堂に行くと、そこには不機嫌オーラ全開で優雅に紅茶を飲むユーリと面白い位対称的にボロボロになったアッシュの姿…
私が庭に出ていた十数分の間に一体何があった。

「お、おはようユーリ…」
「ああ美琴か…おはよう」
「あら…スマイルはどこ?起こしに行ったんでしょ?」
「おかしいッスね、さっきまでそこにいたのに…」

アッシュがキョロキョロと辺りを見渡してると…

「おはよー美琴ー」

腰の辺りに何か抱き付いてきた気配。
姿は見えないが犯人が誰かと聞かれれば一人しかいないのでとりあえず…

「えい」

ゴスッ

「ふぎゃッ!」

声の聞こえた方に真上から肘鉄落としてみたりして。
手応えを感じて腰の辺りを見れば案の定スマイルが頭を押さえながら姿を見せた。

「あいたたたタ…ひどいなァ。何するのさ美琴」
「それはこっちの台詞だと思うんだけど?」
「んー…朝のスキンシップ?って言うカ前々から『生はじ』のアニメ見てて美琴の細い腰抱き付いてみたかったんだヨ」
「貴方変態なの?馬鹿なの?死ぬの??」
「うわー!生毒舌!ちょっト感激!!」

駄目だ、逆に喜んでる。
もしかしてこっちの世界にいる私のファンって皆こんななのかしら…だとしたらちょっと嫌ね…

「何やってるッスかスマイル!年頃の女の子に抱き付くなんて…」
「全く、お前という奴は…」
「ゴメンゴメン。美琴が可愛いからついネ」
「まぁ良い、朝食にするぞ。いい加減食べないと冷めてしまう」
「そうね。それじゃあ…」
「「いただきます」」
「…何かユーリがいただきますって言うの不思議な感じ…」
「アッシュがこう言うのに五月蠅くてな」

あ、納得。

「そう言えば今日はMZDや優歌ちゃんと買い物に行くんスよね?」
「ええ、そうよ。あ…買い物で思い出したわ。バ神に今日誰か付いてきてもらえって言われてたの。皆今日の予定ってどうなってるかしら?」
「予定ッスか…俺は城の掃除とか洗濯片付けたいッスねぇ」
「僕も行きたいけどさァ、今日雑誌の取材が入ってるンだよねェー…残念」

って事は…

「私は予定が無いが…行かないぞ。どうせ荷物持ちになるのだろう?」

正解。
ユーリには悪いけど連れていかないとバ神にコケにされるのが目に見えるから…仕方ない、出来ればこの方法は使いたくなかったんだけど…

「そう言えばバ神に言われたのよ…荷物持ちしてくれそうな人無理矢理にでも拉致って来いってね。無理矢理にでも

自分の意志で行くのと引きずられて行くの、どっちがお好み?と昨日バ神を殴った右の拳を握り締めて満面の笑顔を浮かべれば…

「…仕方ないな、今回限りだぞ」
「ありがとう」

ごめんなさいユーリ。
今度埋め合わせはするわ…多分。

「でもファンの子に見付からないようにしないと大変ッスよ」
「いくら新メンバーでもユーリが女の子と一緒に歩いてるのを見られたら大騒ぎだもんねェ。まだメンバー入り公表してないシ」
「そうね…」

何たって売れっ子バンドのボーカルだし…
ん?『女の子と一緒』?

それよ!!
「うわっ!な、何スかいきなり!?」
「良い事思い付いたの。アッシュ、ここの電話どこにあるか教えて。それからバ神の家の電話番号も」
「良いッスけど…どうするッスか?」
「音々に頼み事。こっちの世界に来てから向こうで使ってた携帯が使い物にならないからここの電話使いたいの」
「分かったッス。でも、音々に頼み事って?」
「ふふふ…内緒」

それは後のお楽しみ。

プルルルルル…ガチャ

「はい、こちらMZDの家です」
「あ、その声は音々ね。おはよう」
「おはよう美琴!どうしたの?何かあった?」
「朝早くからごめんなさいね。実は音々に頼みたい事があって…」
「うん…はいはい…分かった。じゃあ後でねー。…ハテナくん、この家に使わない布とかあるかな?なるべく綺麗で大きい奴。あと裁縫道具も」

僕が尋ねるとハテナくんは元気よく頷いてパッと姿を消した。そして一瞬で戻ってきたその腕の中には今からやろうとしている事に使うには充分な大きさの布と裁縫箱、小型のミシンが抱えられていた。

「ありがとうハテナくん!」
「美琴の奴何だって?」
「んーとね…服作ってくれって」
「服?今日買いに行くだろうが。っつーか今からで間に合うのか??」
「飾りボタンとかポケットとか…凝ったデザインにしたりとか余計な装飾着けなければすぐ出来るよ」
「ふーん、流石オーダーメイド洋裁店の娘って所だな」
「でも変なんだよねーこの服。美琴が着るには少し大きいんだよ。言われたサイズ、メモしたんだけど見てみる?」
「どれどれ?…確かにでかいな。女が着るにしては肩幅広めだし」
「でしょ?」
「俺主催者だからパーティー参加者の個人データある程度把握してっけどさー、これ体型とかユーリが着たら丁度良さげって…」
「「」」
「…ねぇMZD、僕この服完成したら何に使われるか分かった気がする…」
「奇遇だな、俺様もだ」
「はぁ…美琴ってば何考えてるんだか。まぁ、頼まれたからには作るけどね、作る理由も何となく察しが付くし」
「面白そうだな。こりゃ後が楽しみだぜ♪」
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