Trip×とりっぷ×トリップ!

□Moonlight panic
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突然だがDes家こと六さんの家はかなり広い。流石にユーリのお城には負けるけど公園並みの庭なんかもある。
そんな家の庭外れに実はもう一軒、普通の一軒家でも可笑しくない大きく立派でちょっと古い離れが建っていたりするのだが…

「ねぇ、あの離れの中ってどうなってるの?アタシここに来てから一回も行った事ないんだよね」

秋晴れのある日、最近雨続きで外に出せないどころか洗う事さえ出来なかった洗濯物を学生組総出で干しながらアタシはふと思った疑問を口にした。

「さぁ…?僕達もあの中には入った事が無いんですよ」
「普通の家なんじゃねーの?」
「あ、僕知ってる」
「え、マジか。どんな家なの?」
「あの家ねー…出るらしいよ

……………え?

「カジカ…出るって…まさか『アレ』じゃないよね?」
「ううん、まさかの『アレ』」
「『アレ』、何?」
「んなもん決まってんだろ、幽霊だよゆ・う・れ・い」
「幽霊?」
「ジャックにも分かりやすく言うとね、君の元上司であるカニパン頭の仲間だよ
「分かった」
「優歌ちゃん、カニパンは可哀想だよー。せめて羊頭にしてあげなきゃ
「どっちもどっちだと思うんですけど」

その頃…

「はっくしゅん!…これが風邪か?そのような物をひく体では無いと思っていたが…」

※違います

「カジカはその話どっから仕入れたんだよ、六さんか?」
「近所の人から。何でも夜中に笑い声とか光る物をみたらしいよ」
「そうなのか?俺達全然気付かなかったけどなー」

言われてみればそういった類の物が出そうな気がしないでもない。

「何か…気味悪いね」
「優歌ちゃん、ひょっとして怖いの?」
「な、何言ってるの!そんな訳無いじゃん!!」

本当は苦手なんだけど…カジカには口が裂けても言えない。
言ったが最後、DTO辺りと一緒にネタとしてからかわれるに決まってる。

「ほら、そんな事より早く洗濯物干しちゃおう!」

干し終わって家に帰ると台所でミサキさんが何か作っていた。

「ただいまー…ミサキさん何作ってるんですか?」
「あらお帰りなさい。見ての通り、お団子よ」
「お団子…?」
「今日天気予報でね、満月だって言うから『月見でもするか』って六が言い出したのよ」
「良いですね」
「そういう事だ、お前達帰ってきて早々悪いがコレ使って庭のススキ取って来い。ついでに草刈りな」

声のした方に振り向くと人数分の鎌を持った六さんがリュータの後ろに立っていた。

「うおっ!びっくりしたぁ!!」
「六さん鎌持ったまま背後に立たないでよー」
「六、危険」
「すまんすまん。で、頼めるか?」
「DTO先生とDさんはどうしたんですか?」
「あー?月見酒買いに行かせた」

ソレが目的か。

「じゃあアタシ達だけでやろっか」
「六ー、三方見あたらないんだけど知らないー?」
「ねー、『さんぼー』って何?」
「何だタロー、お前三方知らねーのか?」
「だって僕この家のお世話になるまでずっとハワイ育ちだもん」
「俺も知らない」
「三方はお団子を乗せる台みたいな物ですよ。ほら、そこのカレンダーに描いてある奴」

ハヤト君が指差した先には壁に掛かったカレンダーの絵。
大きな満月と縁側が描かれていて縁側の方には花瓶に活けられたススキ、三方に乗ったお団子、お猪口にとっくりも描いてある。
おそらくはこの絵(特にお酒)を見て月見をやろうなどと言い出したに違いない。

「確か…離れにある台所の方にしまったか?ここ数年月見なんぞしなかったからな」
「優歌ちゃん、取ってきてもらえる?」
「へっ!?ア、アタシですか?」
「草刈りは男共に任せて。ね?お願い」

本当は嫌なのだがカジカがすぐ側にいるし、何よりミサキさんの頼みだ。

「…分かりました」

かくしてアタシの和風ホー●テッドマ●ショ●in離れが決定した。





「よし、行くか。…しかしまぁ近くで見ると更に不気味ねー」

アタシは今離れの前に立っている。
普段近付かないそこは夕方近くになり日が暮れてきた事も手伝って先程見た時よりも更に嫌な雰囲気を出していたりする。

「お邪魔しまーす」

玄関の引き戸を開け、靴を脱いで上がり込んでから少しだけ廊下を進んだその瞬間だった。

ピシャッ!

「!?」

三方を見つけたらすぐに戻るからと思い閉めていなかった扉が勝手に閉まったのだ。
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