RKRN×携帯獣

□後ろの正面だあれ?
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「失礼しまーす」
「あ、アヤノさんこんにちは」
「…よく来たな…」
「こんにちは中在家くん、不破くん。今日もここで勉強していいかな?」

図書室の戸を開けて入ってきたのは他の世界から迷い込んだというアヤノさん。
お手伝いさんとして忍術学園で働く事になった彼女は「お手伝いにしても何にしてもここで生活するならまずはこっちの文字が読み書き出来るようにならないと駄目よね」と読み書きが必要無い校庭の掃除や食堂のおばちゃんのお手伝いをしつつ、その合間を縫っては図書室に入り浸って勉強している。
ご両親が学者をしている影響も手伝って元々本を読むのが好きなんだと言うだけあってアヤノさんの学習意欲と吸収力は物凄く、分からない事があればすぐに僕や中在家先輩に訊きにくる。最近ではひらがな位なら普通に読み書きが出来る上に簡単な漢字も書くのはまだ難しくても何とか読めるようになってきたようだ。

「ええ、構わないですよ。でも今日は図書委員全員で新しく入った書物の整理があるので周りをちょっとうろうろしたりするかもしれないけど大丈夫ですか?」
「うん。むしろ私が邪魔にならないよう気を付けるよ。じゃあ仕事が始まる前に必要な本だけ抜き取っちゃおうかな…中在家くん、どれがおすすめ?」
「もそ…そうだな…今のアヤノの進み具合なら…これがいい…」
「ありがとう」

中在家先輩から本を受け取ったアヤノさんは早速机の前に座ってそれを広げ勉強を始める。こうなると分からない事があって僕達に訊きにくるか閉館時間に話しかけるまでずっと本の虫だ。

「さて雷蔵…私達も作業を始めるか…」
「はい」





それから程なくして久作ときり丸、怪士丸も来たので各々新刊を抱えて本棚に向かっていく。

「(これはここの棚っと。えーと、次は…あれ?)」

新刊を該当する本棚に入れ、次に取りかかろうと自分の隣に積んでおいた本の山に手を伸ばすと何故か空振りしてしまった。よく見ると先程より本が減っている気がするのだが…

「(…気のせいかな?いやでもさっきまではこの高さまであった気がするし…でもやっぱり気のせいかもしれない…うーん…)」

暫し悩んだが結局は僕の隣で黙々と作業している久作がたまたま自分の担当している本棚に入る本だったから先に片付けておいてくれたか、もしくは自分で無意識の内に本棚へ入れたのだろう。
そう自分自身の中で解決して再び作業に戻った。





「雷蔵先輩…」
「ん?どうしたんだいきり丸」
「怪士丸の様子がおかしいんです」

それからまた暫くして、もう少しで全ての作業が終わるという所できり丸が話し掛けてきた。
彼に言われてその隣にいる怪士丸の顔を見ると普段から優れない顔色がいつも以上に悪くなっているのが一目で分かった。

「大丈夫かい怪士丸?!体調が悪いなら保健室に行った方が…」
「いいえ、体調が悪いんじゃないんです。実はさっき変な物を見て…」
「変な物?」

怪士丸曰く、先程僕が体験したのと同じ様に新刊を本棚に入れる作業をしていたらいつの間にか本が少なくなっていたのだと言う。
しかし彼は次に入れようとしていた本の表紙に書かれていた題名を覚えていたのでそれが一番上に無いのはおかしいと思い、どこに行ったのだろうと辺りを見渡したら…

「本が…ふわふわと宙に浮いて勝手に本棚にしまわれていったんです…」
「「……………」」

怪士丸の証言によって図書室が重い沈黙で包まれる。
心無しか他の皆の顔も真っ青だ。

「な、何言ってるんだよ怪士丸…そんな事ある訳「本当なんですよ能勢先輩!僕本当に見たんです!!」わ、分かった!分かったから落ち着け!!」
「とりあえず中在家先輩に報告しよう。話はそれか…ら…」

即否定しようとした久作に怪士丸が涙目になって詰め寄り、僕が中在家先輩への報告を提案しようとしたその時だ。

「…?どうしたんですか雷蔵先ぱ…い…」

喋るのを止めた僕に話し掛けてきたきり丸の声も小さくなる。

「「…………………………」」

怪士丸の言った通り、確かに本が浮いている。しかも僕達の目の前で。

「「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!?!?!?!」」

ドンガラガッシャーン!!
バサバサバサッ!!

「ん?今の音何??」
「うへへへへへへへへへ…」
「中在家くん何でそんな顔してるの?!」
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